「甲子園中止」の代替大会開催が混乱深まる理由 高校球児への「大人の思い」が空回りしている

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筆者は前回のコラム『「夏の甲子園中止」を嘆く大人たちに欠けた視点』で、秋以降の感染第2波の到来を考えれば、翌春の甲子園の実質的な予選である秋季大会を夏季に行うべきではないか、と書いたが、認識が甘かった。とても実現しそうにない。高校野球の混乱は、秋までに新型コロナ禍が完全に終息しない限り、翌年以降も続きそうだ。

痛感するのは、大人たちの「連携不足」だ。高野連と教育委員会は、ともに学校を現場とし「子供の教育」に関与する機関だ。「平日でも午後何時からなら試合開催は可能」「何曜日の午後は授業を設けないことは可能」などの細かな確認が取れれば、平日に試合を行う余地が増える可能性もあるだろう。

また、高野連と高体連がバラバラでイベント開催を模索するのではなく、共催することにすれば、医療スタッフを共有できたり、開催費用を折半できるなど、いろいろなメリットがある。高校野球の試合をする球場は、ほかの競技施設も整備された「総合運動公園」内にあることも多い。高野連と高体連が同じタイミングで大会を行えば、送迎バスを共有できるなどのメリットもある。

佐賀県ではほかの競技との合同大会を開く

佐賀県では6月13日から7月30日の土日で、陸上競技やラグビーなど29競技30種目が参加するSAGA2020SSP杯佐賀県高等学校スポーツ大会を開く。ここに野球も参加する。県高体連、県高野連、県、県教育委員会が協力して開催にこぎつけたとのことだ。本当に子供のことを考えれば、こういう形で大人が知恵を出したほうがよい。

「甲子園を秋に延期してでも開催すべき」という意見も一部の識者の間ではあるが、7、8月に地方大会の開催が困難な中で、甲子園の代表を決めることはできない。

また阪神タイガースは今年も8月には甲子園球場を高校野球のために、空ける意向のようだが、残念ながら、高校球児がプレーする姿を見ることができる可能性は、現状では極めて低い。

こうした状況から浮かび上がるのは日本の高校野球の制度疲労だ。昭和の時代からまったく変わらないやり方で続けているうちに、時代の変化に対応できない体質になっている。

今後の高野連は、経済基盤を確立すべきだ。多くの識者がすでに「あれほどの人気スポーツなのに放映権料を取っていないのは信じられない」と言っているが、無観客試合でも実施できる財力は必要だろう。

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