「甲子園中止」の代替大会開催が混乱深まる理由 高校球児への「大人の思い」が空回りしている

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また、夏の甲子園では、2017年まで外野席は無料だった。人気カードともなれば優に1万人を超す観客が入るが、これを収益化していなかった。春の甲子園はいまだに外野席が無料だ。春夏の甲子園は球場使用料免除になっているとはいえ、ここまでの「清貧」はもはや美徳とは言えない。

多くのスポーツイベントでは、大会公式スポンサーを設定している。こうしたことも含め、財政面で改革する余地も大いにある。「金がないために、選手に試合をさせてやることができない」ではあまりにも残念すぎる。

もう1つは高体連などほかの競技団体との連携だ。「高野連と高体連、組織が違うのだから、全国大会中止を決める時期が違うのは当たり前だろう」という声があったが、この危難に際しては高野連も高体連もない。運命共同体のはずだ。

子供たちのために一緒になって知恵を出し合い、事態を打開すべきだ。スポーツ庁も高野連、高体連の差別なく補助金を出そうとしている。中には連携している地方もあるようだが、没交渉の地方もある。一緒に考えれば知恵も出るし、メリットもある。ぜひ、この機会に連携を模索してほしい。

代替大会が中止になっても試合をやらせたい監督の思い

「代替大会の中止が決まったら、僕らの手で試合をやらせてやろうと考えています。他校の先生ともお金を出し合って球場を借りることを考えています」

前出の関西地方の公立高校監督は話した。

別の関東地方の監督は「学校の校庭で試合をすることも考えています。学校なら校医の先生もいますから。学校も協力してくれそうです」と言った。

さらに「うちは、中止が決まってから退部した子が何人かいるんですが、試合をするときはそういう子も呼んでやりたい」と言う四国地方の監督もいた。

彼らは異口同音に「高野連がどういうか、心配ですが」と言った。

高校球児に対する大人たちの「善意」が、いろいろな場面で「空回り」していると感じる。

高校野球に関わる大人たちは、今こそ知恵を出すことが求められている。物事が起こってから動くのではなく、未来を予測してそれに備える。逆に言えば、今が改革のチャンスでもあるのだ。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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