参加校数の少ない地方では、土日だけの試合でも消化できるので、代替大会が可能になるということだ。ただ昨年時点で全国屈指の165校が加盟している埼玉県は代替大会の開催を決めた。「今後の状況を踏まえながら準備を進めていきたい」としている。
もう1つの問題は「財政」だ。今夏の高校野球は、「無観客」が原則となっている。無観客試合だと、入場料は入らない。またスポンサーもつきにくい。高校野球は人気スポーツなので、地方大会でも地元民放やNHKが中継を行っているが、高校野球は原則、放映権料を受け取っていない。無観客試合になれば、球場の使用料やスタッフの費用など、完全な持ち出しになってしまう。地域によっては球場使用料が無料や割引になっているところもあるようだが、経済基盤の弱い高野連の中には、開催が難しいところもでてくる。
実は、地方大会については、かなり早くから「無観客での開催は厳しい」という声が上がっていた。「夏の甲子園」の開催が断念するに至ったのはこの問題が大きかったのだ。
それがわかっていたから代替大会についても日本高野連は、「全国で実施すべし」ではなく「都道府県の判断で決めるべし」と通達したわけだ。
日本高野連と朝日新聞社が全国の地方高野連に向けて2億円弱の支援を行うと発表したのは、福岡県高野連が代替イベントの実施を断念した後の26日だった。福岡県以外にもかなりの地方で代替大会ができそうにないことに、危機感を抱いたからではないか。
また日本高野連は代替イベントを7イニング制で行うことも決めた。試合時間を短縮し、1日に消化する試合数を増やすための配慮だろう。
スポーツ庁も開催支援に乗り出している
ほぼ同時期にスポーツ庁も上限を1大会当たり1000万円とする総額8億円の補助金を、高野連、高体連に支給すると発表している。
見過ごせないのが「医療」の問題だ。高校野球の公式戦では、球場に医師、看護師、理学療法士など医療スタッフが待機しなければならない。しかし新型コロナ禍で全国の医療体制がひっ迫する中、それが厳しくなっている。毎年、熱中症で手当てを受ける選手、関係者が出ているが、病院に搬送することになれば感染のリスクも出てくる。これも深刻な問題だ。
こうした現状では、高校球児のために全国そろって「代替大会」を行うのは、極めて厳しいことがわかる。
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