「コロナ後の大学」に求められる唯一無二の役割

世界を救う大学発ベンチャーを育成できるか

コロナ後の社会に必要とされる技術の実用化に向けて、大学発ベンチャーに寄せられる期待は小さくない(写真:y.uemura/PIXTA)

新型コロナウイルスの影響で、全世界がさまざまな新しい困難と向き合っている。その解決策の一端を担う存在として、いま注目されているのが「大学発ベンチャー」だ。

アメリカでは公的支援は中小企業向けが多く、ベンチャーは支援を受けにくいのが現状だが、大学発ベンチャーにはエンジェル投資家(創業まもないベンチャーに投資する個人)などから、追加投資が行われる傾向がみられる。

日本でもアメリカでも、新型コロナ関連の研究が注目されており、「新しい生活様式」の下での社会課題の解決に貢献したいという志と、それに適した技術のあるベンチャーには好機だといえる。例えば、遠隔医療などのデジタルヘルスのベンチャーは有望だろう。

しかし一方で、日本の大学発ベンチャーは、過去にグーグルやエアビーアンドビーを輩出したアメリカと比べると、まだまだ小粒の感が否めない。日本とアメリカ、彼我の違いはどこに起因するのか。筆者が研究滞在しているカリフォルニア大学の事例から探ってみたい。

大学発ベンチャーの育成に不可欠な組織

世界に貢献できる技術、とりわけ理工系・医学系のイノベーションに関して、いちばん多く眠っている場所は、研究蓄積を持つ研究室と知的好奇心にあふれた研究者を有する「大学」だといわれている。

研究の商業化による経済効果はもちろん、長期的にはイノベーションによって社会全体が恩恵を受けるため、世の中に科学・技術を生み出すことは大学の役割の1つといえる。

その中で、大学発の事業化においては「TLO」の存在感と役割が大きい。これはTechnology Licensing Organization(技術移転機関)の略称で、経済産業省の定義では「大学の研究者の研究成果を特許化し、それを企業へ技術移転する法人であり、産と学の『仲介役』の役割を果たす組織」であり、「大学発の新規産業を生み出し、それにより得られた収益の一部を研究者に還元することにより研究資金を生み出し、大学の研究の更なる活性化をもたらすという『知的創造サイクル』の原動力として産学連携の中核をなす組織」だという。

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