「コロナ後の大学」に求められる唯一無二の役割 世界を救う大学発ベンチャーを育成できるか

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大学は「お金のための研究ではない」「ビジネスにおける会社との交渉が苦手」と思いがちだが、正当な対価をもらうことがベンチャーの育成につながり、将来的には社会貢献にも発展すると、大学側が理解する必要がある。

アメリカでは、大学発ベンチャーの重要性と有望性について、かなり以前から認識されている。では、実際にどのような取り組みが行われているのか。

カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)を例に見てみたい。同校はカリフォルニア大学を構成する10大学の中では比較的小規模な大学だが、特に医学・工学部が優秀で、研究も盛んである。

以前は、TLOに研究者から新技術に関する相談があると、特許専門の弁護士が申請可能かの判断を提供するだけだったらしい。しかし、申請可能な技術が多すぎて、予算が膨らみ、売れ残りも多く、非効率という欠点もあった。

こうなると、申請する特許を減らすしかない。そこで、将来売れそうな技術を選別することを目的に、大学発ベンチャーを支える「UCI Beall Applied Innovation」という組織を設置した。特許の出願や交渉だけでなく、予算を活用しながら、本当に実用化の可能性が高い有望なベンチャーを支えるシステムを考えたのだ。

TLOの戦力を最大化させた3つの変革

UCIのインダストリーアドバイザーも務める、前出の清泉氏は、この組織の特徴として次の3点を挙げる。

1つは、最初からビジネス観点で評価する点だ。特許を出願する前に、数十人の投資家のメンターたちに発明開示(invention disclosure)の書類を送り、ビジネス観点からの評価をもらう。

それにより、有望な技術に集中でき、予算もコントロールできる。研究が実用化できるかどうか、スーパーアーリーステージでビジネス観点から専門家に評価してもらえるのは、斬新な取り組みだといえる。

2つ目は、優秀な人材だ。同組織には博士号を有する職員が多く、専門性があり、案件の選別能力も高い。企業と交渉する際も研究者に代わって、ある程度の高度な質問に回答できるし、技術も理解しているので適切な技術評価が可能だ。

また、企業で勤務経験がある職員も充実しており、企業や投資家と交渉する際、非常に役に立つ。日本だと、TLOは事務処理で終わるところが多い。技術の価値を理解していても、交渉できる職員がいないため、UCIのような役割を果たすことが難しい。

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