フランスのエマニュエル・マクロン大統領が言うように、COVID-19は「人類学的ショック」を私たちに与えた。しかし、この危機に対して、世界は、いや人類全体が、インターネットによってその危機を知覚し、危機克服の取り組みにリアルタイムで参画し、そこからの教訓を普遍的に学ぶ共同作業をすることができる。
たしかに、グローバル化の進展によってCOVID-19の感染スピードは急速だった。それはウイルスのグローバル化と言ってもよいだろう。一方、それに対する各国の対応もまたインターネットによるグローバル化を特徴としている。そこでは世界の知の連携による可能性が広がっている。
「濫用・悪用」に対して「善用」を
新たに創造されるテクノロジーとイノベーションが、人類の健康と経済の発展と世界の平和に貢献することは間違いない。同時に、それを実現するには、テクノロジーに潜むさまざまなリスク、すなわち、倫理的、文化的、社会的、安全保障的、政治的リスクを国際協調の枠組みの中で全人類的に管理し、克服していかなければならない。
2019年は、インターネットの起源となる2つの研究が開始された1969年から50年、WWW(World Wide Web=ワールドワイドウェブ)誕生の1989年から30年でもあった。これらの議論では当然インターネットの30年後、50年後への課題は何かという議論になる。
ここで筆者が最も頻繁に耳にした世界の社会学者からの答えは‘Ethics’(倫理)だった。筆者はサイバーセキュリティーのコンテキストでの「濫用・悪用(abuse)」に対して、「善用(ethical use)」という言葉を使っている。経済的な評価軸を重点としたこれまでのインターネットに対して、新しい社会の創造に取り組むときが来た。
(文:村井純/API地経学研究所所長・APIシニア・フェロー・慶應義塾大学教授・慶應義塾大学サイバー文明研究センター共同センター長)
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