しかし、インターネットはアナーキー(無政府状態)ゆえに、その環境には負の側面が生まれることになる。今回のコロナ禍においても、そのおぞましい姿を見ることになった。
ロシアと中国のディスインフォメーション。
中国のハッカー集団によるワクチン関連米医薬スタートアップ38社へのサイバー攻撃。
米中間の政府当局者によるツイートによる激しい非難の応酬。
そして、なんといっても崩壊寸前の医療機関への容赦ないワナクライ攻撃(悪意のあるプログラムであるランサムウエアの新種による攻撃)。
振り返ると、インターネットは1980年代に学術環境によって発達し、1990年代に経済の基盤として発展した。人間の知と創造性を自由に発揮でき、かつ、国境のない、人類にとっての初めての「地球で唯一の文明」が創造された。
2000年にはインターネットに参加していたのが地球人口のわずか6%だったのに、2019年末には世界人口の58.7%へ。全体の総利用者の半分近くをアジア地域が占め、しかもその22億人にしても、アジアの人口でみれば半数にすぎない。インターネットインクルージョン、つまり残された人類がインターネットに参加する未来の伸びしろのほとんどが、日本と韓国を除いたアジア圏にある。
地経学における新しい構造を提示
これらのことは、地理、政治、経済の関係における地域での役割を示している。デジタル技術とインターネットを前提とした新しい社会、インターネット文明は、地経学における新しい構造を提示するものである。
ポストコロナ、そして、ニューノーマル(新常態)への遷移が未来のインターネットを先導するポイントは、3つある。
まずは、歴史が示すようにパンデミックや大規模災害からの出発には既存体制にとらわれない、イノベーションがカギとなる点である。デジタル技術で構成されるインターネットのようなプラットフォームは、そのうえで営まれるイノベーションのコストを極小化し、優れた知の集積と企画立案、そして、大規模なまったく新しいサービスの運用を推進する。
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