感染拡大「アマゾン倉庫」あまりにお粗末な対策 自らもコロナ陽性になった従業員が語る
アマゾンは、アメリカ内の多くの会社より先にパンデミックに直面した。世界的なサプライチェーンへの影響に不安を抱いた同社は2月上旬、感染症の専門家に相談した。アメリカで最初に感染が拡大したシアトルに本社を構えるアマゾンは、同地域にいる5万人の従業員を対象に3月5日からテレワークを開始するよう命じた。
この頃、アマゾンには大量の注文が殺到するようになっていた。かつて経験したことのない急激な注文の増え方だ。同社のジェフ・ベゾス創業者兼CEOは、これを「これまでに経験した中で最も困難な時期」と呼んだ。
アマゾンは仕事を続ける従業員に割増賃金を支払い、注文を処理するために17万5000人を追加雇用すると発表した。ベゾスは賃上げや感染防止措置、検査など、コロナ関連の第2四半期経費は40億ドル以上になると投資家に語った。
それでもトイレットペーパーやジグソーパズルはほぼ品切れとなり、アマゾンが苦戦する様子を全米1億世帯のプライム会員が目撃することになった。即日または翌日配達の約束と、従業員の安全確保のバランスをどうとるか。これがコロナ以来のアマゾンの課題となっている。
形だけの対策、空っぽの消毒スプレー
ケリーが働くヘーズル・タウンシップの60万平方フィートの倉庫では、中国などから到着した商品がトラックから積み降ろされ、小さなパッケージに分けられ、顧客に出荷するためにアマゾンのほかの施設にトラックで運ばれていく。
感染防止対策は同倉庫でも3月中旬から実施されるようになっていたが、厳格さには欠けた。対策を監督するチームが3月17日、聖パトリックの日に合わせ、緑色の物を身につけて写真撮影のために集まったとき、彼らはソーシャルディスタンス(社会的距離)を保たずにひっつき合って立っていた。メイン通路には、6フィート(約180センチメートル)毎に黄色いテープの目印が付けられたが、多くの人が「いつもと同じように」近づいて作業していたとケリーは話す。
この倉庫で9年間働いてきたケリーは4月1日、柱に設置した4つの手指消毒用スプレーが空になっていることに気づいた。その日しばらくして、喉がいがらっぽく体調のすぐれないケリーは早退した。数日後、ウイルス検査で陽性が判明した。