感染拡大「アマゾン倉庫」あまりにお粗末な対策 自らもコロナ陽性になった従業員が語る

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感染者数が公表されなくなった理由を、数人の従業員が倉庫のホワイトボードを使って上司に問いただしたところ、次のような答えが返ってきた。数字を知らせたところで、それで何かが変わるわけでもない、会社としては従業員に恐怖心を抱かせたくないのだ——。

4月11日のまだ暗い早朝、害虫防除会社のトラックが倉庫の駐車場に停められた。防護服と防毒マスクを装着したチームが、シフトの合間に建物内に消毒液を噴霧した。

4月下旬になっても混み合っている場所が

ほかの安全改善措置も講じられた。今まで空のパレット10枚を2人で運んでいたところを、1回につき5枚を1人で運ぶことになった。重い物はほかの従業員と一緒に持ち上げるのではなく、傾けて引きずって運ぶよう管理者から指導があった。マスクの着用も義務付けられた。

ところが、4月下旬になっても、混雑しすぎて従業員が安心できないと思われる場所がまだ残っていた。ある従業員はフェイスブックグループで、同僚に向けてこんな情報を書き込んだ。ソーシャルディスタンスはいろいろな場所で実践されているが、「エンド・オブ・ライン」と呼ばれる荷物の積み降ろし場所の近くは違う。ここは人で混み合っている。

別の従業員も、出荷準備のために、パレットを挟んで25人の従業員が向き合って商品を扱っているのを見たと書いている。「感染者が出るとしたら、それは今夜のシフトの従業員だろう」と、この従業員はフェイスブックに投稿した。彼女はその後、管理者に問題を伝えたら、互いにもっと距離を置く措置が講じられるようになった、と語っている。

4月下旬に仕事に復帰して以来、ケリーはたびたび11時間近いシフトで働いてきた。コロナ感染で失った収入を穴埋めしようと、残業しているのだ。アマゾンは、コロナに感染し、病欠となった従業員に最長2週間にわたって給料を支給しているが、ケリーは2週間以上、仕事に戻ることができなかった。

ケリーは、欠勤中に作業台の数が減らされたのを見てうれしかったと話す。これまでは互いの間隔が狭すぎたからだ。消毒スプレーを補充するためだけに雇われた従業員も何人かいた。「ただ、あまりに遅すぎたんですよ」とケリーは言った。

(執筆:Karen Weise記者)

(C)2020 The New York Times News Services

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