マスク、消毒液「実売値」に見た品薄解消の現実 爆発的な需要増が一巡し流通が落ち着いてきた

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まずはマスクだ。結果を言えば、回復基調にある。2020年1月最終週に需要が急増し、そして大幅下落したあと、2020年5月1週現在では、昨年のピーク時に近い数量になっている。

1月最終週の買い物指数は約37万7000。これは前年の5倍だ(なお、ある時期までは制限がかかっておらず来訪者がマスク数点を買えたケースもある)。来店者がマスクを求めて殺到したことになる。その後、3月4週目の買い物指数は3万5000にまで低下した。この頃は、おそらく来店者のほとんどがマスクを買えていなかった。読者の皆さんの感覚とも近いと思う。

それが、2020年5月1週には、買い物指数は7万7000まで上がった。まだまだ買えていない人も少なくないだろうが、それでも店頭では買い求めやすくなったと見られる。なお、昨年最も売れた1月3週目の買い物指数は約8万8000だ。ということは、昨年のピーク時レベルには近づいていることになる。

マスクの生産・販売は、旧来からのメーカーが増産し、さらに異業種からも参入が相次いでいる。日本ではシャープやミズノが始めたし、アイリスオーヤマ、パナソニックなども参入を表明した。さらには無数の業者が適正な価格によるネット販売も開始している。自動車関連企業のボッシュも、ドイツ国内にマスクの自動生産ラインを開設した。世界の有名ブランドも販売に乗り出している。

また、手作りマスクの風潮も広がってきた。不織布以外の材料でマスクの代替にする工夫も見られた。さらに海外から徐々にマスクが入りつつある。また、アベノマスクもあった。

需要と供給の法則どおり、供給が満足な量になれば、人々に行き渡り、販売価格も落ち着いてくる。一時はマスクの転売屋が話題になったり、ネットでは高額販売が話題になったりしたものの、この傾向を見る限り、そろそろ収束に向かうだろう。

買い物指数に地域差はなかった

ところで、調査を進める過程で面白いことを発見した。私は3月に仕事で東京から福岡県に向かった。東京の張り詰めた雰囲気と違い、博多の街はまだそれほどの緊張感はなかった。したがって、日本の地域によって買い物指数に大きな違いがあるとばかり思っていた。しかし調べると、どの地域も、微細な違いはあっても、基本的に同じ傾向だった。1月下旬から爆発的な上昇を見せ、そのあと品切れで下落。4月下旬から緩やかな回復傾向にある。

メディアなどの影響によって、実際の感染状況にかかわりなく購買に走ったということなのだろう。この点は別途、分析したい。

次は殺菌消毒(アルコール消毒等)商品だ。

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