コロナショックはグローバル化に「とどめ」刺す 反グローバルの動きはすでに始まっていた

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今回のコロナショックは金融危機(リーマンショック)、ブレグジット&トランプ大統領就任に次ぐ「グローバリゼーションに対する第3のショック」と見ることもでき、そのショックが全世界の人命に関わる危機であったことも相まって一段と企業部門の経営姿勢や政府部門の政策姿勢を変容させていく可能性があるのではないかと察する。

その動きが極まって、「極力、国内で賄えるものは国内で」となってしまうとそれがインフレ圧力として顕現化する恐れはある。それ以前に今回の教訓を活かして医療関連の戦略物資になりそうなものは輸出管理が敷かれるかもしれない(実際、EUではそのような初動が見られている)。そうなると望む望まないにかかわらず、国内生産を強いられる財もこれからは出てくる可能性がある。こうした動きは、とりわけ製造業の現場における慢性的な人手不足が指摘される日本においては賃金上昇圧力が生じやすい話だが、一方で企業の経営体力を奪いかねない話になる。

「過剰な貯蓄の使い道」は?

東洋経済オンラインの過去のコラムでも繰り返し強調してきたように、アフターコロナの経済・金融情勢を読み解く最大のキーワードは「民間部門の貯蓄過剰」ではないかと考えるが、それに加えグローバリゼーションの巻き戻しがもたらす国内回帰という論点も加味する必要があるかもしれない。

とすれば、民間部門に滞留する「過剰な貯蓄の使い道」についてもいろいろな選択肢を想像する必要が出てくるだろう。この辺りは別途、機会を設けて論じたいが、例えば企業でいえば、国内外において収益機会が乏しくなることを踏まえれば、新規の設備投資や雇用を増やすよりも自社株買いや配当といった方向に資金が流れやすいのかもしれない。

片や、投資家の視点に立てば、貯蓄過剰で金利が低位安定する以上、「定期的なインカムを生む株式」という目線で投資を買われやすい地合いになる可能性もある。昨今、実体経済の割に株価が高止まりしているのを見ると、アフターコロナにおいては(これまで以上に)実体経済と金融市場の挙動に乖離が見られる世の中になっていくのかもしれない。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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