瀧本哲史「人間と奴隷を分かつたった1つの差」

自由を得るには「武器としての教養」が必要だ

で、いろんなことをやったんですが、ほとんどうまくいかなかったらしいんですよ。ところが唯一大成功した施策がありまして、それが「コピー機を国中にバラまく」ことでした。

なんでコピー機をバラまくのがよかったかというと、共産主義国家では、国内にあるコピー機や印刷機はぜんぶ国家に管理されてるんです。つまり、自分の意見や主張を紙に印刷して広く発表する方法がなかった。

それでソロスが私財をはたいてコピー機をバラまいた瞬間から、いろんな活動家が自分のビラをバラまくようになって民主化運動が盛り上がっていき、その結果、母国のハンガリーだけでなく、ポーランドとかチェコスロバキアとかの東欧の国々がソ連から独立するのに成功したと言われてます。

やっぱり、とんでもない人物です。

僕がカリスマじゃダメだなと思っているときに、ふとソロスのことを思い出しまして、「意見をバラまくことには世の中を変える力があるんじゃないか」と思うようになり、それで僕は最近になって急に出版に力を入れているというわけです。

僕は、この講義の主催である星海社新書の軍事顧問に就任しています。名刺もあります。ちょっと出版社の肩書きで軍事顧問というのはあり得ないと思うんですが(笑)、「武器」とか「軍事顧問」という中二病的なネーミングの裏には、じつはこのソロスから学んだ思想があるんです。

『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』(星海社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

要するに「何かすごいリーダーをひとりぶち上げるより、世の中を変えそうな人をたくさんつくって、誰がうまくいくかわからないけれども、そういう人たちに武器を与え、支援するような活動をしたほうが、実際に世の中を変えられる可能性は高いんじゃないか」ということ。

つまり、「カリスマモデル」でなく「武器モデル」です。

じゃあ、この国で誰に「武器」を配るのか想定しているのは全成人なんですが、その中でもとくにメインとしているターゲットは「20歳の若者」です。

人間と奴隷を分かつもの

次の日本を支える世代である彼らが自由人として生きていくために必要不可欠な「武器としての教養」を配りたいと思っています。

実際の話、「自由人」とか「成人」とか言ってますけど、まだ人間になってない人もたくさんいるんですね。単に人の言うこと聞いて「アウーアウー」みたいな(会場笑)。

外見だけは人間なんですけど、やってることは人間以下という人が老若男女問わず世の中にはたくさんいてですね、そういう人たちに「早く人間になってくれ」ということです。厳しいことを言うと、「自分で考えてない人は、人じゃない」わけです。

かつてアリストテレスは「奴隷とは何か?」という問いに、「ものを言う道具」と答えました。僕がいまの世の中を見ても、けっこうな数の「ものを言う道具」の人がいます。一応ものは言って人間のかたちはしてるんですけど、自分の頭で考えてない人があまりに多いので、そういう人を人間にしなきゃいけないという問題意識というか、使命感もあります。

現代社会では、しっかり自分の頭で考えられない人間は、「コモディティ(替えのきく人材)」として買い叩かれるだけですからね。

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