メガバンク、「脱炭素化」に大きく舵を切る理由 投融資方針を相次ぎ転換、抜け道の批判も

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インドネシアやマレーシアなどでは、現地の大手財閥グループがパーム油や木材・紙パルプ生産を推進。メタンなどの温室効果ガスを大量に排出する泥炭地の開発が続いているうえ、先住民の強制立ち退きや労働法違反がたびたび発生し、大きな社会問題となってきた。メガバンク各社はこれらの財閥グループに多額の融資を実施してきた。

RANなどの国際環境NGOはそうした企業による森林破壊や人権侵害の実態を詳細に調査したうえで、メガバンクの貸し手としての責任を追及するキャンペーン活動を世界規模で展開。その一方でメガバンクと対話も続けてきた。

「責任ある銀行原則」が後押し

みずほは石炭火力発電所向け投融資方針も大幅に見直した。従来は発電効率が最も高い超々臨界圧方式の石炭火力であれば投融資を実行するとしてきたが、今回の方針変更ではこうした高効率の石炭火力発電所であっても新規の投融資を行わないとした。

こうした動きについて、環境NGO「気候ネットワーク」の平田仁子理事は、「脱石炭火力発電という点において、みずほは日本の金融機関の中において、最も前向きな方針を示した。石炭火力の推進を掲げる政府の方針の枠外に一歩出ようとするものであり、ビジネス界に与える影響は大きい」と高く評価する。

ではなぜ、メガバンクはこうした動きに舵を切ったのか。企業の脱炭素化への取り組みに詳しい東京大学の高村ゆかり教授は「『責任ある銀行原則』に署名したことによる影響が大きい」と指摘する。

国連環境計画・金融イニシアティブが主導する同原則は、2019年9月にニューヨークで開催された国連サミットに合わせて正式に発足し、日本のメガバンクも欧米やアジアの有力銀行とともに名前を連ねた。高村氏は「同原則の特徴は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)や地球温暖化対策の新たな枠組みであるパリ協定に、自社のビジネスを整合させることを銀行に求めている点にある。メガバンクの署名により、間接金融においてもパリ協定との整合性を踏まえた脱炭素化の機運が高まっている」と指摘する。

メガバンクはG20の金融安定理事会が設立した「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言に基づく、気候変動リスクの分析や情報開示も進めている。

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