メガバンク、「脱炭素化」に大きく舵を切る理由

投融資方針を相次ぎ転換、抜け道の批判も

この分野で先行したのが三井住友FGだ。同社は気候変動が原因で発生するとみられる災害による想定損失額を試算し、開示している。世界で最も早くTCFD最終報告書の趣旨を踏まえた試算結果を開示したことをきっかけに、「サステナビリティをめぐる投資家などとの面談の回数が、2019年には前年比で10倍にも増加している」(末廣孝信・サステナビリティ推進室長)という。

環境分野に関する銀行の取り組みは、世界規模で加速している。

2015年12月にパリ協定が合意されて以降、EU内の大手銀行の多くが石炭火力発電向け融資を取りやめている。アメリカではゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどが、2019年末以降、石炭火力発電や北極圏での石油・ガス開発への新規投融資を取りやめると相次いで宣言した。

メガバンクの方針に「抜け道」との指摘も

世界最大手の資産運用会社ブラックロックは、投資先の経営者に宛てた2020年の年頭書簡の中で、サステナビリティに関連した情報開示で十分な進展を示せない企業について、株主総会で経営陣と取締役の選任に反対票を投じる考えを表明した。

ヨーロッパとは異なり、アメリカの金融機関は石油・ガスなど化石燃料分野への投融資額が大きく、脱炭素化に消極的な姿勢を示す企業が多かった。それだけに、今回の方針策定に関わったみずほの幹部が「米銀の姿勢の変化も横目に見ながら方針の強化を検討してきた」と明らかにするように、アメリカの金融機関の姿勢の変化は日本のメガバンクにも影響を与えている。

もっとも、「メガバンクの方針には抜け道が少なくない」との指摘もあり、メガバンクが真価を問われるのはこれからだ。

「『環境・持続社会』研究センター」(JACSES)の田辺有輝理事は、みずほの石炭火力発電に関する新方針にある「運用開始日(6月1日)以前に支援意思表明済みの案件は除く」との記述を問題視する。

田辺氏は、「政府間の合意があることを理由として、みずほなどと国際協力銀行は、5月中にベトナムのブンアン2石炭火力発電事業に支援表明をする可能性がある」と予測する。ブンアン2石炭火力発電所については、日本のインフラ輸出戦略の一環として官民での支援が検討されている。

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