コロナ後の日本を襲う「サイバー犯罪」の難題 セキュリティー軽視は国力を損なう大問題に

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――少し目の前の状況にフォーカスして、新型コロナ影響下で高まっているサイバーセキュリティーリスクはありますか?

コロナ危機に対応するため、リモートワークを含め公私にわたりオンラインでの活動が増えていると思う。増えれば増えるほど、いわゆる「オンライン初心者」も増加する。そのため犯罪者にとっては、これまでアクセスできなかった層の人々までオンライン経由でアクセスできるようになり、いわば「新たなビジネスチャンス」が生まれているような状況だ。

また新型コロナ関連の給付金・補助金についても、すでに給付金の支払いが始まっているドイツではこうしたオンライン詐欺が多数発生しているとの報道もある。まさに日本でもこれに関連した犯罪が増える可能性は十分あり、警戒を高める必要がある。

さらに、オンラインでの活動の比重が急速に高まっている中で、仮にランサムウェアにより社員のPCや業務システムが乗っ取られてしまうと、組織にとっては致命的なダメージになることが容易に想像できる。そのため、「データ身代金」目当てで犯罪者がランサムウェアの使用を増やしていくおそれが高まっているだろう。

求められるインセンティブの付与

――サイバーセキュリティーの観点で見ると、マイナスが大きいと。

リモートワークの推進をきっかけに業務上非効率だった点が効率化され、結果として生産性が向上している面もある。こうした流れが、最終的にはGDPを押し上げる新しい高付加価値産業を生むことににつながれば「災い転じて福となす」となり、長期的にはプラスになるかもしれない。

こうした目的を達成するためには政府が率先してデジタル化を進め、民間でのデジタル化の取り組みが加速するような仕組みを作ることも必要だろう。

他方、急速なオンライン化に伴い、不十分なサイバーセキュリティー体制のままサービスを続ける企業が増えないように、政府には企業がプライバシー保護とサイバーセキュリティー対策をしっかり行うインセンティブを与える仕組みづくりを支援してほしい。

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