コロナ後の日本を襲う「サイバー犯罪」の難題 セキュリティー軽視は国力を損なう大問題に

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―ー具体的には?

例えば日本IT団体連盟では、サイバーセキュリティー版「ミシュランガイド」のような形で、企業のサイバーセキュリティー成熟度について有価証券報告書等の各種公開情報をもとに、一定の基準に照らして星付きの評価していく制度を進めている。

三つ星など評価が高い場合に、政府系金融機関からの融資の際に金利優遇を受けられるなどのメリットがあれば、より多くの企業が積極的にサイバーセキュリティーを強化していくはずだ。

予定通りにいけば、2021年には東京五輪が開催される。五輪開催国は毎回のようにサイバー犯罪者に狙われる。オフィシャルスポンサーをやっているような企業、組織委員会などは格好の標的だ。お金を盗りたい犯罪者だけでなく、その企業のブランドを落とすほか、国や都市のレピュテーション(信頼性)の失墜を狙うパターンもある。これらが現実のものとなる前に、国も企業も、できることから進めなければ。

ステイ・セキュアやステイ・セーフも忘れずに

――個人レベルで今、気をつけるべきことは?

普段われわれが使っているインターネットの中には、コンピューターを感染媒体としてわれわれの情報やお金を盗むウイルスや、コンピューターシステム自体を破壊するウイルスが存在し、日々これらと闘っていく必要があるという認識を持つことが重要。いわば、サイバー空間上では常に「ウィズ・ウイルス」だ。

よって、われわれが意識しなければならないのは「サイバー公衆衛生」であり、まさにリアルの新型コロナ対策でやっている手洗い・うがい・マスク着用のサイバー版を行う必要がある。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

具体的には、OSやソフトのバージョンをしっかり更新する。ウイルス対策ソフトを入れる。知らないメールを開かない。変なリンクを開かない。出所のわからないソフトやアプリを安易に使わない……。こういう基本的なことに日ごろから気を付けることだ。

こうしたことを個々人がしっかりと行うことで、サイバー犯罪者にとって犯罪行為を行いにくい、すなわち犯罪耐久性が高い社会が築かれる。長い眼で見ると、安心したオンライン生活を送ることにつながる。ステイ・ホームの間にはぜひ、ステイ・セキュア(しっかりとしたセキュリティー対策をする)、ステイ・セーフ(怪しいサイトや知らないメールの添付資料を開けないなど)も忘れないでほしい。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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