コロナ禍で終わる「日本人の異常な安売り信仰」 「良いものを安く」では危機への備えは不可能

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日本の国際競争力ランキングは世界でも第5位です。このランキングには、提供している商品やサービスの質の高さが反映されています。一方で、価格が不適切に安価に設定されているため、生産性は世界第28位に留まってしまっています。

「高品質・低価格」戦略が間違っている4つの理由

私は、以前から「高品質・低価格」の経営戦略が根本的に間違いであると訴えてきました。その理由は4つあります。

1:薄利多売ができなくなった

まず、高品質・低価格戦略の前提に薄利多売があること、これが問題です。

「多売」が成立するためには、究極的には需要すなわち人口が増加する必要があります。確かに昔の日本では人口が急増していたので、この戦略にも合理性はありました。

しかし、今、日本はすでに人口減少時代に突入しています。あたりまえですが、消費者が減っているので、今後の日本では多売は成立しにくくなっているのです。

2:社会インフラの維持コストを負担できない

次に、高品質・低価格は、社会インフラを無視した戦略である点が問題です。

道路、電気、防衛などの社会インフラのコストは、人口が減ったからといって、それに比例して減るわけではありません。さらに、生産年齢人口と子どもの数は減っても、高齢者の数は減らないことが予想されているので、年金と医療のコストはむしろ増大するとされています。

ということは、納税者1人ひとりが負わねばならない社会インフラのコストは、毎年増えることになります。事実、労働時間1時間あたりの社会保障負担額を生産年齢人口で割ると、2020年現在では824円ですが、これが2060年には2150円にまで増える計算になるのです。

いまだに薄利多売戦略を良しとしている経営者は、このような社会コストの増加を完全に無視していると言わざるをえません。単体の企業としては、薄利多売戦略でも収支がトントンであれば、問題はないように思われます。しかし、社会インフラのコストまで計算に入れると赤字になっているのです。

これは経営者の質の問題です。諸外国でも、企業の規模が小さくなればなるほど(1)生産性を測定していない、(2)生産性を測定する時間がない、(3)社会にとっても、自分の会社にとっても、生産性の意味・重要性を理解していない、ということが確認されています。

個々の企業の薄利多売戦略のコストを負担しているのは、結局は日本全体です。法人税も消費税も減ります。生産性が低いので、社員の給料も低水準で所得税も低くなります。給料が低ければ消費が減り、それがまた税収に影響をあたえ……負のサイクルが回り続けます。

政府が社会インフラを充実させるほど、支出と収入のバランスが悪くなり、国の借金が増える結果になります。社会インフラのコストを勘案した薄利多売戦略の赤字は、政府が間接的に補填しているのです。

私は最低賃金の引き上げを主張し続けていますが、その究極的な理由は、こういった実質赤字を出している企業の薄利多売戦略を律することです。

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