――ホテルビジネスでは普通、需要が落ちると、単価を落として客室稼働率を回復させます。時間をかけて客室単価を引き上げてきたパレスホテル東京はどうだったのですか。
「安売り」という選択肢はまったくなかった。(客室)単価を落としてしまうと、なかなか元の水準まで戻らない。ブランドを保つ上で、なるべく単価は落とすべきでない。
3月は割り切って稼働率の低下を受け入れ、単価で踏ん張ろうという戦略をとった。
リモートワーカー向けの宿泊プランなど、どんなプランにしろ、利用客がたくさん来てしまうと、従業員の安全が確保できない。従業員の安心・安全が第一なので、(こうしたプランは)まったく考えなかった。
今後1年は資金繰りの心配はない
――2019年末時点の流動比率(流動資産/流動負債)は65.6%と100%を切っています。財務の健全性に懸念はないですか。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染者が発生した2月初旬から、新型コロナウイルスの影響は長期化すると見込んでおり、2月中旬には取引銀行と融資の相談を進めていた。十分な融資枠を確保できたので、今後1年は資金繰りの心配はない。
近年、ホテルがたくさん開業しているため、業界における人材集めは相当大変になってきている。営業再開後のことを考えると、足元で売り上げが減少したからと言って、(人員削減などの)リストラは絶対できない。
管理職を除き、ほとんどの従業員は休業に入っているので、雇用調整助成金の力も借りつつ、給与は100%保障していく。
――年間売上高313億円のうち、オフィスビル賃貸事業が64億円を占めます。
ホテル事業への影響が見込まれる中、(オフィスビルの)賃貸事業に助けられている部分はある。1961年のホテル開業に際し、創業者がホテルにオフィスビルを併設するビジネスモデルを構築した。
その方針を2012年の建て替え・再開業時も受け継いで、相当な面積をオフィスビルに割いた。もし事業がホテルだけであれば、コロナ禍(を乗り切るの)はかなり苦しかっただろう。
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