ここで、ファストファッションと聞いてもピンと来ない方のために、ごく簡潔に説明させていただきます。ファストファッションとは、メーカーが生産から小売りまで一貫して行う小売り製造業(SPA)という形態です。従来のプレタポルテ(高級既製服)の服作りに比べ、ファストファッションは、その名が示すとおり、生産にかかるリードタイムが非常に短いのが特徴です。そして、すべての工程をコントロールすることで、生産や物流を効率化し、コストを厳しく抑え、低価格を実現するという挑戦が続いています。
また、現在のSPA企業世界ランキングで、ユニクロを展開するファーストリテイリングは第4位。第1位は、ZARAを展開しているスペインのInditexで、売上高は167億ユーロ、日本円で約2兆3000万円前後となっています。
さて、前置きが長くなりましたが、本日のテーマは、これらZARAやH&Mをはじめとするファストファッションブランドが、どうしてここまで成功したのか、ということです。
ファストファッションが大成功した本当の理由
先ほどもお伝えしましたが、ファッションビジネスでは、ターゲットを明確にすることが大事です。
ZARAやH&Mは、そのターゲットを、トレンドをおいかけるアーリー・アダプターではなく、それにあこがれるアーリー・マジョリティを中心に、レイト・マジョリティのごく一部をカバーするマジョリティでもクリエイティブよりに設定しました(詳しくは、前回参照)。
特に“トレンドにとても敏感なアーリー・アダプターにあこがれる層”というのがポイントです。つまり。アーリー・アダプターとマジョリティの合間にあるキャズム(溝)を的確にとらえ、それを価格の大改造によってうめ、市場のニーズを掘りおこしました。さらに、この層はおしゃれ自体に関心がありますので、お財布のヒモは比較的ゆるい、という点もポイントです。
もちろん、それ以外の成功要因もあります。ファストファッションの生産や物流における改革はすさまじく、仕組みづくりや企業努力も並大抵ではありません。いずれにせよ、これらのブランドはマーケットが必要とする商品を、適切なバランスでマーケットに提供することを可能にしたのです。もし、ファッションをビジネスと割り切って、単に売上高というビジネス上の物差しのひとつで計るならば、このビジネスモデルは大成功していると言って間違いありません。
では、具体的にどうやってそれらの商品を提供することができたのか。ファストファッションの成功を支える、価格のために犠牲にされたものはないのか。それをお話すると、少し驚かれるかもしれません。
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