それから、2つめは、クオリティです。ファストファッションに、高級ブランドのクオリティのものは、逆立ちをしても提供できません。いくらデザインで似せることができても、素材や縫製、ディテールをみれば、明らかです。これは、ファストファッションが低価格のビジネスモデルである以上、コストが高いブランドのクオリティは明らかに不可能なのです。
わかりやすく、おにぎりに例えてみます。最高級のこしひかりと極上の海苔を使ったおにぎりと、コンビニの普通のおにぎりがあります。2つとも見た目は似ていますが、食べてみるとその差は歴然です。服も同じです。袖を通し、身に着ければ、その違いはおのずと明らかになります。
ファストファッションと高級ブランド
さて、今回はファストファッションの成功についてお話しました。実際、ビジネスとしてだけ考えれば、今や高級ブランドの売り上げを上回っていることは紛れもない事実です。
ですが、その成功の裏には、高級ブランドの発信するトレンドがあります。高級ブランドへのあこがれや羨望、という目には見えない感情や欲望の上に、このビジネスは成り立っています。高級ブランドの作る服を着たいけど、着ることができないというジレンマや欲求があるからこそ、このビジネスは生まれました。そして、一見追いつかれたような形になっていますが、本物とコピーの間には、ゼロから創られたものと既にあるものを真似たものの、超えられない壁があります。
さらに、忘れてならないのは、消費者の存在です。消費者も値段重視で、そこまでのクオリティを要求していないという点です。ゆえに、ニーズが存在し、マーケットとして成り立っているのが、現代の特徴です。これはどちらがよい、悪いという話ではありません。消費者がファッションに何を求め、どういうニーズで服を選ぶか。それが完全に個人に委ねられた時代なのです。
山本耀司さんの著書(※)の中に、ファストファッションについてのこんな記載があります。まさに、これがファストファッションというものを端的に表していますので、最後にご紹介させて頂きます。
(ファストファッションとは)「テレビの低俗番組と似ていますね。その瞬間、楽しければいいという」
さて、次回は、さらにもう一歩踏み込んで、「なぜ人は高級ブランドの服を着たがるのか」について、お話したいと思います。
※ 本文内でご紹介した本
耀司さんの生い立ちから現在までの話に加え、後半の100の質問では、耀司さんの新たな一面をうかがうことができる、とても興味深いオススメの1冊です。
『服を作る モードを超えて』
山本耀司著 中央公論新社
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