テイクアウト頼みの外食が挑む新しい生活様式 マック、スタバ、吉野家が自粛営業で得た教訓

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だだし、ドライブスルーの利用者が急増すると、車の列が道路にまで伸びてしまい、道路によっては近隣の住民やほかの車の邪魔になりかねない。各社ともドライブスルーの絶好調を手放しでは喜べない。

そのためこうした大手チェーンでは、事前にネット注文できる仕組みを周知し、利用を促している。商品の比較・検討や注文、あるいは決済まで事前に済ませてもらうことで、店頭でのオペレーションを軽減する。顧客にとっては待ち時間が少なくなり、接触のリスクを軽減することができる。

一方で、居酒屋をはじめレジャー的な使われ方をするチェーンや、商品に加え居心地やコミュニケーションなどの総合的な接客を売りにしていた店舗は、感染防止のために多くが休業に踏み切った。同じ外食でもあまりテイクアウトには向かない業態かもしれない。

串カツ田中は一部店舗で時短営業する一方、テイクアウトにも注力している(記者撮影)

居酒屋では、「塚田農場」などを運営するエー・ピーカンパニーがいち早く、4月2日から一斉休業に踏み切ったのを皮切りに、ほとんどのチェーンが緊急事態宣言中の休業を決断。食事としての需要が一定程度ある串カツ田中ホールディングスなどは、一部の店舗で時短営業しているものの、大幅な売り上げの落ち込みは避けられない。

拡大中の焼き肉チェーン「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションも4月7日以降、国内の直営全店舗を一斉休業した。焼肉きんぐは2月2日にTV番組で取り上げられ、2月については既存店客数が前年同月比で3割も増える好調ぶりだったが、コロナに水を差された格好だ。

原材料費3割、人件費3割、家賃が1割

カフェチェーンでも休業や時短営業が相次ぐ。スターバックス コーヒー ジャパンは「特定警戒都道府県」の13都道府県で全店舗を休業し、それ以外の地域でもテイクアウトのみで19時までの営業、と踏み込んだ対応を取った。「毎日ルーティンとしてコーヒーを飲む顧客もいたが、従業員の安全を第一に考えた」(スターバックス)。

もちろん業界としても、ただ手をこまねいているわけではない。苦境にあえぐ飲食店の経営者が結集して、政府に対し、コスト負担の重い家賃の減免や猶予を求める動きが出ている。

外出自粛が本格化した3月31日には、大阪の三つ星レストラン「Hajime」でオーナーシェフを務める米田肇氏を中心に10人の料理人が集まり、自民党の岸田文雄政調会長のもとを訪問。政府の外出自粛要請によって売り上げが激減したことを受け、8万筆近くの署名を持って、家賃などの固定費の補助を求める陳情を行った(コロナで半分がなくなる?飲食店「倒産ドミノ」)。

緊急事態宣言の発令後に事態が深刻化した4月21日には、飲食店経営者らの有志の集まりである「外食産業の声」が記者会見を開いた。タリーズコーヒージャパンの創業者で元参議院議員の松田公太氏が中心となり、不動産オーナーが賃料交渉に応じることの義務化や政府系金融機関による家賃の立て替えなどを求めた、「家賃支払いモラトリアム法」を提案している。

一般的に、飲食店の経営では売り上げに対して、おおよそ原材料費が3割、人件費が3割、家賃が1割だ(店によってはもう少し大きい)。さらに、広告宣伝費や水道光熱費などの諸経費を差し引くと、売り上げの5%ほどしか利益が残らない。

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