大手総合商社の中で最初に決算発表を行った三井物産。新型コロナウイルスの感染拡大の先行きを見通せないとして、業績予想の公表を見送る大手企業が相次ぐ中、三井物産は今2020年度の業績見通しと新たな中期経営計画(2020~2022年度)を5月1日に発表した。
中期経営計画の策定作業に着手したのは2019年の夏からだが、最後の詰めの段階でコロナショックが起きた。決算会見で安永竜夫社長は「一昨日まで(中期経営計画の)議論を続けてきた」と述べたうえで、「定量面でその(コロナショックの)影響を見通すことは非常に困難だ」と計画公表までの苦労をにじませた。
原油価格の急落が利益を圧迫
三井物産の2020年3月期の純利益は前期比5.5%減の3915億円。前回の中期経営計画(2017~2019年度)で目標に掲げていた純利益4400億円の目標には届かなかった。
最終減益となった主な要因は、石油・ガス事業の複数のプロジェクトで計上した475億円の減損だ。コロナ影響で世界の原油需要が大きく減退したこともあり、3月後半のイギリスの原油先物(ブレント)は2020初めの半分以下の1バレル20ドル台にまで下落。これで石油・ガス関連の資産価値の見直しを迫られた。
2021年3月期は原油だけでなく、景気悪化の影響から鉄鉱石などの商品価格も弱含みで推移するとみられ、資源に強い三井物産にとって影響は避けられない。そのため、2021年3月期の純利益見通しは前期比で半分以下となる1800億と公表した。コロナ影響の減益要因は2000億円弱だが、そのうち1000億円は原油や鉄鉱石などの資源事業だ。次に大きいのが自動車関連やヘルスケア事業で合わせて700億円程度を織り込んだ。
30人以上の上席の役員を飛び越え、当時54歳だった安永氏が社長に就いたのは2015年4月のこと。その翌年、2016年3月期は資源案件を中心に2000億円以上の減損を計上し、創業以来初の最終赤字に転落した。以来、コスト削減や資産入れ替えなどで資源事業の収益性強化に取り組んできた。それでもコロナ影響には抗えず、大幅減益という厳しい見通しを出さざるをえなかった。
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