原油価格は「底値」の見通しが立たなくなった

4月のWTIはマイナス価格をつける異常事態

アメリカのシェールオイルの主要生産地であるパーミアン盆地。増産を進めてきた事業者は原油の歴史的な安値に直面している。テキサス州で2019年11月撮影(写真:ロイター/Angus Mordant)   

原油価格の底が抜けた。4月20日のニューヨークの原油先物(WTI)の5月物は1バレル=マイナス37.63ドルという前代未聞の値をつけた。「マイナス価格」は、保有する原油を相手に渡してお金をもらうのではなく、お金を支払って相手に原油を引き取ってもらうことを意味する。

こうした事態に陥ったのは、現物の扱いがネックになったからだ。「WTIの場合、オクラホマ州のクッシングで現物の原油を引き渡す。今、クッシングの原油タンクは満タンに近く、受け入れは難しいとの見方が強まった」(日本貿易振興機構・アジア経済研究所の福田安志・名誉研究員)ことが要因だ。

先物市場の参加者には石油業界関係者のほかに、金融機関やトレーダーもいる。受け入れ場所が満タンに近い中、金融機関やトレーダーは現物の持ちようがない。そのため、「多額の料金を払って粗大ゴミを引き取ってもらうような状況になった」(石油業界関係者)。

国際エネルギー機関が警鐘

先物の異常事態は新型コロナウイルス感染拡大による実需急減の影響だ。アメリカのエネルギー情報局によれば、4月初めのアメリカ国内のガソリン需要は3月に比べて半減。ジェット燃料需要は7割減った。

需要急減でアメリカ国内の原油在庫が積み上がっており、WTI6月物の原油価格も下落し、4月21日には一時6ドル台まで下落した。「今回のマイナス価格を教訓に、6月物はパニック売りによる極端な価格が出るとは考えにくい」(石油業界関係者)。だが、一時的に価格がマイナスに振れる可能性はゼロではない。 

原油相場の異変はWTIだけのものだが、英国の原油先物(ブレント)も4月下旬で1バレル20ドル台と年初の3分の1程度まで落ち込んでいる。価格低迷に産油国も手をこまぬいていたわけではない。サウジアラビアを中心とするOPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国で構成するOPECプラスが、4月13日に緊急の協議を開催。世界の原油生産量の1割にも及ぶ日量970万バレルの大規模な減産を決めた。

だが、この発表後も原油価格は反応しなかった。新型コロナの影響による世界の原油需要の減少はそれほど著しいからだ。

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