原油価格は「底値」の見通しが立たなくなった 4月のWTIはマイナス価格をつける異常事態

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国際エネルギー機関は4月15日に公表した月例報告で、4月の石油需要が前年同月比で日量2900万バレル、5月は2600万バレル減少するとの見通しを示した。これは世界全体の消費量の約3割に相当する。そして、OPECプラスが発表した協調減産は「すぐに原油市場を回復するものではない」と言い切っている。アジア経済研究所の福田氏は、「協調減産量が不十分だったため、かえって原油価格が下落した。投資家はOPECプラスの対応には限界があるとみている」と指摘する。

4月13日のOPECプラスの合意を受け、トランプ大統領はツイッターで「アメリカ国内の多くのエネルギー関係者の雇用が守られる」とし、有力産油国のサウジとロシアに謝意を表した。しかし、歴史的減産に原油相場はまるで反応せず、価格は低迷を続けたまま。それどころか、WTIでは前代未聞のマイナス価格となった。相場の回復を期待したトランプ大統領の思惑は外れた格好だ。

世界最大の産油国であるアメリカのシェールオイル生産の採算ラインは1バレル=50ドル程度といわれており、現在の原油価格は採算割れの水準で「シェールオイル開発に強いブレーキがかかる」(福田氏)のは間違いなさそうだ。

需要がどこまで落ちるか見えない

原油価格の下落に歯止めがかからないため、日本の石油元売り各社の業績にも不透明感が漂う。石油連盟の月岡隆会長(出光興産会長)は4月17日の定例会見で、「現時点で2021年度の業績見通しを示すのは難しいだろう」と述べた。

次回のOPECプラスの会合は6月10日に行われる。原油相場の低迷が続けば、この会合を待たずして、緊急会合で追加措置を協議する可能性は十分ある。ただし、減産量のさらなる拡大がすんなり決まるかどうかは別問題だ。4月に合意した日量970万バレルの減産はサウジやロシアなどが生産量を23%減らすのが前提だ。

アメリカが協調減産の枠内に入っておらず、もともと協調減産には否定的だったロシアがさらに身を切る(減産量を増やす)ことに同意するのか。OPECプラスでの議論は難航が予想される。

原油価格の先行きは、コロナが収束し世界需要がいつから回復してくるかにかかっている。だが今は、回復時期どころか、需要がどこまで落ち込むのかも見えない。視界不良の中で、原油価格は当てもなく底値を探り続けることになるだろう。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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