テイクアウト頼みの外食が挑む新しい生活様式 マック、スタバ、吉野家が自粛営業で得た教訓

✎ 1〜 ✎ 72 ✎ 73 ✎ 74 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

現在のように休業してしまった場合、原材料費をはじめ変動費はストップできる。人件費も政府の雇用調整助成金によって大半はカバーできる。しかし、家賃は休業しても発生し続けるため、飲食店の経営を大きく圧迫する要因になっている。

このままでは多くの飲食店が倒産しかねず、延期された2021年の東京五輪を迎えてインバウンド需要が回復したとき、「飲食店が足りない」という事態さえ起こりうる。不動産オーナーや政府の財源にも、苦しい事情があるとはいえ、家賃について何らかの支援策を講じる必要がある。

タリーズコーヒージャパン創業者の松田公太氏は外食産業救済のため「家賃支払いモラトリアム法」を提案した(記者撮影)

外食チェーンの中には現在も比較的堅調なのに、こうした同業者の苦悩を見るにつけ、「うちが好調とあまり書いてほしくない」と漏らすところもある。「コロナに乗じて儲けている」と見られるのを恐れているからだ。

とはいえ、テイクアウトが支持されて売り上げを保っている飲食店は、儲けだけでなく、営業を続けること自体が社会的使命でもある。外食産業は国民の飲食を提供するインフラとして欠かせない。

食を提供するインフラとして認められるべき

2015年の国勢調査では、単身世帯の割合が34.6%となり、2005年から約5ポイント上昇した。近年は晩婚化などの影響によって、一人暮らしの世帯が増えている実態もある。

単身の場合、スーパーなどで食材を購入して1人分の食事を作るのは時間や費用の面で効率が悪く、外食にかける支出が相対的に多い。総務省の家計調査によると、2019年の年間支出金額に対する外食代の割合は、2人以上の世帯の5.0%に比較して、単身世帯が10.4%と2倍以上もの開きがある。実額で見ても、2人以上の世帯の外食代では年17.6万円なのに比べ、単身世帯は22.8万円と差が大きい。

営業を続けることに対し、一部では批判の声もあるかもしれないが、「食を提供するインフラ」としての役割は認められるべきだ。その中で、事前ネット注文など感染防止に資する施策を講じたうえ、利用を促進していけば十分成り立つのではないか。

5月連休明けから始まった、緊急事態宣言下の”新しい生活様式”。かつてない逆境に立たされる外食業界だが、単身世帯の増加や将来的なインバウンド需要の増加といった、長期トレンドが大きく変化したわけではない。この未曾有の危機で生き残った飲食店こそ、一回り経営体質を強化していることは間違いないだろう。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事