感染者の「ペット」を無償で預かるサービスとは 飼い主の「もし自分が入院したら」という不安

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「当社は『予防型の保険会社』をうたっています。保険はもちろん病気やケガのときに必要になるものです。でも、ペットにとっても飼い主さんにとっても、保険を使わないのが一番です。そのため健康チェックで腸内フローラ測定を行い、ペットの健康度合いを確認しています」(兵藤氏)

加入したペットが年1回受診できる健康チェックでは、腸内フローラを調べて腸内年齢を測定(写真:アニコムホールディングス)

グループ内に研究所を設け、ペットの病気の大きな原因となっている遺伝病のリスクを低減する研究・取り組みも進めている。例えば遺伝子検査や、ブリーダーをサポートし、科学的な知見に基づくブリーディングを普及させることなどだ。

つまり同社の商品は単なる保険でなく、ペットの健康を守るための包括的なサービスということだ。

今回の「#StayAnicom」プロジェクトが可能なのも、こうした事業方針と、人材を含めた諸設備が基盤になっているためだ。

「当社には獣医師が100人以上在籍しているとご説明しましたが、研究所や動物病院の職員のほか、例えば保険販売にかかわる職員などにも獣医師資格を持っている者がいます。保険契約の際に病歴や診療歴に基づく判定に役立つということもあり、積極的にそうした人材を採用しているのです。今回、当社こそ飼い主さんの不安にお応えすべきという、いわば使命感からプロジェクトを立ち上げたという経緯があります」(兵藤氏)

新型コロナウイルスの影響は現在のところ、同社の保険事業にはまださほど表れていないとのことだが、ペットショップそのものの営業がストップしているため、今後加入が減少することも予想される。

しかし長い目で見て、今回のプロジェクトが同社についての認知を広げるきっかけにはなりそうだ。比較的新しい商品であるペット保険に入るのを躊躇している人や、ペット保険自体を知らない人もいる。#StayAnicomプロジェクトは今、飼い主の誰にとっても関心が高いテーマであり、同社の存在を強く印象づけるに違いない。

ペットシッターや保護猫NPOの状況は?

話は転じるが、今回ペットに関わる事業ということで、ペットシッターや、保護猫NPOにも新型コロナによる影響をリサーチした。

まず、自宅を訪問してペットの世話を行うペットシッターでは、外出自粛などに伴って自宅で過ごす人が多いため、通常より予約は低減している傾向にある。

新型コロナに感染してしまったとの理由での申し込みは数件あるものの、感染拡大を防ぐ理由から、サービス提供は断らざるをえない状況のようだ。やはり、ペット預かりに対応できる事業者や施設が不足していることがわかる。

都内で猫カフェ方式の保護猫シェルターを運営しているNPO、東京キャットガーディアンでは、来店して猫とふれあえる猫カフェ部分の営業はストップしているが、里親希望者への譲渡は続けているそうだ。

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