延期中「競技場の芝生」はどう管理しているか

スポーツターフの第一人者が実践すること

池田さんが経営するオフィスショウ(本社:東京都港区)には、グラウンドクルー(整備を行うグラウンドキーパー)が37人もいる。平均年齢34歳の若さで、ここ10年は東京農業大学・造園科学科(地域環境科学部)で公園や緑地の造園を学び、入社する人も増えた。息子の桃太さん(1997年生まれ)も同学科卒業後、父の背中を追った。

黙々と作業が続く(写真:筆者提供)

競技場と練習場では「管理方法」が違う

「芝生とは『芝』という草を植えたものだと思う人が多い。でも英語では植える草をグラス(grass)、刈り込んで絨毯(じゅうたん)のように仕上げた状態をターフ(turf)と呼ぶように、芝と芝地は別物。芝生用に植える品種もさまざまです」(池田さん)

管理も状況に応じて行う。競技場の芝は『オーバーシード』と呼ぶ方法で養生する。

「冬芝が枯れる前に夏芝のタネを蒔くことで、冬芝の衰退と逆行するように夏芝が成長します。現在の味スタも夏芝が成長し、冬芝が衰退しつつある段階です」(同)

夏芝は「バミューダグラス」、冬芝は「ペレニアルライグラス」系品種を多く使う。

プロ選手が使う場合でも、試合会場と練習場では整備の仕方が違ってくる。試合会場では、ホームチームの選手が最高のプレーができるように整備し、練習場では見た目のよさよりも、選手の頻繁な使用に耐えられるように整備を行うという。

現在、同社が管理するグラウンドは、国内33カ所。この中には味スタのほか、国立競技場(東京都新宿区)、JFA夢フィールド(千葉県千葉市)もある。競技場から練習場、陸上競技場や軟式野球場まで幅広い。

ちなみに、プロサッカーチームの公式練習場は、各クラブの責任者から委託を受け、競技スタジアムは所有者(自治体が多い)から委託を受けるという。国立競技場は公開入札の結果、同社に委託された。このほか、校庭・園庭などの管理も14カ所を行う。

国立競技場の整備業務も同社が委託されている。 (写真提供:独立行政法人日本スポーツ振興センター )

池田さんが芝生管理の仕事を始めたのは、31年前の1989年。イベント運営会社を経営する時代に、東京で開催されたナショナル・フットボールリーグ(NFL)の公式戦「アメリカンボウル」運営を手伝った。この時に、アメリカで最も有名なグラウンドキーパーであるジョージ・トーマ氏の教えを受けて、スポーツターフの魅力にとりつかれた。

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