それ以来、現場経験を重ね、全米最大のスポーツイベント、ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の優勝決定戦「スーパーボウル」試合会場のグラウンドクルーにも、1994年から関わり、通算で23回も務めている。
1試合のために1カ月前から芝を張り替え、時には上空にヘリコプターを飛ばし、ホバリング(停止飛行)でフィールドを乾かすなど、費やす整備費用と手法に驚いたという。全米各地から集まった名グラウンドキーパーと一緒に作業し、自らの技術も高めていった。
だが、気難しい職人ではない。「芝生は、見るものではなく使うもの」も持論だ。
以前の取材では「競技場の運営資金を稼ぐため、例えば中古車フェアをしてもかまわない。傷んだ芝生を回復させるのも我々の仕事」と言い切った。
芝の管理で知られる「鳥取方式」(管理運営はグリーンスポーツ鳥取)の技術顧問も務めている。ここで掲げる「芝生」とは、「種類を問わないで、草や芝を頻繁に刈って出来上がった、転んでも痛くないじゅうたんのような形状」をさす。
小学校の校庭緑化とも向き合ってきた。そこには芝生を愛するゆえの信条がある。
校庭や園庭では、伸びた草をこまめに刈る
「日本の芝生文化をピラミッドに例えると、いちばん上にはプロ選手が使う競技場があり、真ん中には市民が使うグラウンドや公園など。そしていちばん下には幼稚園や小学校の校庭緑化があります。子どものうちから、土ではなく芝生に親しんでもらいたいのです。下が広がらないと、ピラミッドも大きくならず、芝生文化は深まりません」(池田さん)
10年以上前、東京都内で「校庭緑化」に取り組んだ小学校が目立った。「芝生の校庭なら、子どもも喜ぶ。転んでも痛くない」と、数千万円を投資した学校もある。だが近くにマンションが建って日当たりが悪くなるなど、想定外の事態も発生。管理コストもかさみ、熱気は醒めた。そもそも大半の学校は、校庭・園庭の芝管理にかけられる予算が少ない。
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