投資用マンション、コロナで「カネ詰まり」危機 融資継続のお達しでも「対面」自粛が痛手

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都内の投資用マンション販売会社は、「オンラインセミナーを始めたばかりでまだ成約は少ないが、対面でのセミナーと比べると、具体的な商談へと移行しづらい。投資経験者ならまだしも、初心者の場合は契約書類や融資書類の記入などを手取り足取り教える必要があり、オンラインでは限界がある」と打ち明ける。

4月10日からは、みずほ銀行が不動産投資ローンの金利設定に関わる長期プライムレート(最優遇貸出金利)を0.15%引き上げると発表した。仮に2000万円の物件を35年ローンで購入した場合、金利が1.9%から2.05%に上がれば年間の金利負担は約1万8400円増える計算だ。当初数年間は金利変動にかかわらず支払金額を一定にする金融機関も少なくなく、大きな負担増とはならないものの、投資家心理にマイナスであることは確かだ。

金融システムへの影響は

緊急事態宣言が発令された7日、金融庁は「金融機関の対顧客業務の継続に係る基本的な考え方 」との談話を発表。金融機関に対して業務を継続するよう要請した。「緊急事態宣言後は融資の新規受付を停止する方向で検討していたが、金融庁の談話を受けて継続へと転換した」(都内の金融機関)という動きもあり、一定の効果はあったようだ。

金融庁が発表した談話。業務継続の一方で、職員の出勤は必要最小限にとどめるよう要請している(記者撮影)

とはいえ、業務継続を要請する金融庁自身も、「非対面による金融サービスの提供を行う」「店舗等への職員の出勤は必要最小限にとどめる」と談話の中に盛り込まざるをえなかった。オリックス銀行はWebやテレビ電話などを用いて、申し込みや契約などの手続きを原則非対面で行っている。中古マンションの売買仲介を行うGAテクノロジーズでも、提携銀行であればグループ会社が提供するシステムを用いて融資手続きを非対面で行えるが、「不動産投資用ローンはオンライン化が遅れており、非対面での融資が可能な金融機関はほとんどない」という。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

実体経済には影響があるものの、金融システムは正常に動いている。だからコロナショックはリーマンショックとは異なる――。これが、これまでの言説だった。ところが、貸し渋りどころか「融資せよ」とお上からお達しを受けているにもかかわらず、外出自粛の余波を受けて融資は間接的に絞られている。販売業者の資金回収が遅れる事態に発展すれば、「体力のない会社は厳しいのではないか」。冒頭の業者はそう危機感を募らせている。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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