だが、どの会社もニーマン・マーカスほど切羽詰まった状況にはない。ニーマン・マーカスは約48億ドルという莫大な負債を抱えている。これは、一部にはアレス・マネジメントとカナダ年金制度投資委員会が2013年に行ったレバレッジドバイアウト(LBO)によるものだ。また、景気がよかった時代に一等地のショッピングエリアで大量に契約した高額の賃料負担も響いている。
3月下旬、破産の噂が広がり始める中、ニーマン・マーカスは新商品の受け取りを停止し、約1万4000人の従業員の大部分を一時帰休とした。最高経営責任者のジェフロイ・ヴァン・ラムドンク氏は自身の4月の給与を見送ると発表した。
同社は取引先や傘下のバーグドルフ・グッドマンの従業員に対し破産申請を検討するためにアドバイザーを招いていることを否定したが、S&Pは4月14日にニーマン・マーカスの信用格付けを引き下げている。さらに同社は4月15日が期限だった利息の支払いを行わず、社債保有者の怒りを買い、破産申請が目前に迫っているという疑念を一段と加速させた。ニーマン・マーカスのスポークスパーソンはコメントを拒否した。
新商品の価格がすでに4割引に
最も財務が健全であると広く考えられているノードストロムですら今月、消費者に近い実店舗の閉鎖が「より長い期間」続けば「苦境」に陥りかねないと述べた。最高経営責任者のエリック・ノードストロム氏と社長兼最高ブランド責任者のピート・ノードストロム氏は、2人とも最低6カ月間は基本給を受け取らない。ノードストロムは最近、土壇場になってメールで発注キャンセルを通知し、取引業者を驚かせた。
百貨店のネット通販サイトでは、新商品の価格がすでに40%も下がっているケースもある。通常なら5月に納品が始まっていたはずのプレフォールシーズン(初秋)向け商品も、発注キャンセルが増えている。納品と同時に倉庫に商品を送り返されたというブランドもある。
支払期限の繰り延べは業者間で連鎖的に広がり、商品を納入するメーカーや卸売業者は、委託先メーカーやマーケティング会社、発送センター、賃貸物件の家主との交渉を余儀なくされている。
「第4四半期(10〜12月期)がどうなるかは誰にもわからない。だが、発注は今始める必要がある」。通常なら百貨店にとって書き入れ時となるクリスマス商戦について、調査会社フォレスターの小売業界担当アナリスト、スチャリタ・コダはこう語った。