「日本の部活動」が国際組織に本格調査される訳 「虐待リスク」は依然として改善していない

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(写真:Fast&Slow / PIXTA)

新型コロナウイルスの深刻な感染拡大で、来夏に延期された東京オリンピック・パラリンピックの再延期が取りざたされている。

東京オリパラ組織委員会の森喜朗会長は4月22日、再延期は絶対にないとの見方を示したが、感染症の専門家たちが早期の感染収束に懸念を示し、状況次第では中止の可能性も否定できない。

コロナ危機の長期化に加え、約3000億円の追加経費を日本とIOC(国際オリンピック委員会)のどちらが請け負うかなど、すべてがペンディング状態の中、スポーツ界を変革させようと着実に歩を進める人たちがいる。

世界100余国の人権状況を調査・モニタリングしているューマン・ライツ・ウォッチ(HRW/本部 ニューヨーク)は、日本で「スポーツにおける子どもの虐待・体罰・ハラスメント調査」を実施。7月には調査報告書(英語&日本語)を発表し、各省庁や国会へ向けた政策提言活動を行う予定だ。

地雷廃絶条約を実現させてノーベル平和賞を共同受賞した世界最大級の国際人権NGОが調査の実施を決めたのは、子どもや若者に対する体罰などのハラスメントに対する問題意識を世界中に発信するためだ。本プロジェクトをリードするHRWグローバル構想部長のミンキー・ウォーデンさんがインタビューに答えてくれた。

日本の体罰問題への印象は…

HRWグローバル構想部長のミンキー・ウォーデンさん(写真提供:HRW)

「私たちは世界のアスリートが理不尽なことや人権を無視されたとき、圧力で沈黙を強いられることがないよう声を上げ戦っています。今回は日本で調査をするが、日本だけの問題ではありません。東京2020を機に、世界の認識を変えるのが目的なのです」

2013年にバスケットボール部の顧問による暴力や暴言を苦にして自ら命を絶った大阪市の高校生や、2018年にバレーボール顧問の指導が原因で自死したとみられる岩手県の高校生らの事件を挙げ「幼少期や十代で虐待されたアスリートは苦痛やトラウマを強く持ってしまう」と目を潤ませた。

1月から開始した調査の中心は当事者インタビュー。数十人超の現・元アスリート、体罰等の被害者家族なども含めヒアリングの聞き取り調査を行っている。

「世界的パンデミックによって、取材や調査を対面でなくオンラインに変更せざるをえなくなった。でも、どんな状況であれトラウマを抱えた虐待被害者へのインタビューの難しさは変わりませんから」とウォーデンさんは意に介さない。

日本の実態を調べるなかでショックだったことが2つあると言う。

ひとつは、自身に起きたことを誰にも言えず、何年も助けを待っていることです。暴力やハラスメントを行ったコーチや教師から謝ってもらってもいない」と憤る。

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