しかし、その後の対応ぶりには、中国の強い権力体制があったからこそ可能になったと考えられる側面が見られます。
強権国家ゆえにできたこと
人口1000万人以上の大都市を即座に封鎖したり、わずか10日間で病院を建設したり、人々の移動を強制的に停止したりするなどの措置が取られました。
さらには、AIとビッグデータを用いて、感染状況をスマートフォンで個別に判断できるアプリも開発され、多くの人々に使われました。
このような強権的な対策の結果、3月下旬には中国における感染状態が抑えられたようです。4月上旬には、武漢およびその周辺地域の封鎖が解除され、経済活動が再開されました。
ところが、アメリカやヨーロッパなどの自由主義国では、新型コロナの爆発的な感染拡大が起こり、イタリアやスペインでは医療崩壊の状況に陥っています。
こうした状況を見ていると、「疫病を抑えるためには、中国に見られるように人権を無視した強権的な政策が必要ではないのか?」という考えを否定できなくなってきます。
「自由か、それとも強権による管理か?」という古くからある問題に対して、極めて深刻な新しい事実が突きつけられていることになります。
自由か、強権による管理かという問題は、コロナ以前から、中国において顕在化していたものです。それは、 AIやビッグデータとの関連において、問われてきました。
例えば、電子マネーの使用実績から個人の信用度を測定する信用スコアリングが、数年前から中国で実用化されています。また、顔認証の技術も発達しており、店舗の無人化などが可能になっています。
こうした技術によって、これまではできなかった経済取引ができるようになっていることは事実です。これは、明らかに望ましい動きです。
しかし、公権力がこうした技術を用いることの危険もあります。警察や公安が、顔認証の技術を用いて犯人の検挙を行っていると言われます。また、信用スコアリングが、本来の目的である融資の審査以外にも用いられるようになっています。
これらの技術は、悪用されれば、権力が国民の生活を思うままにコントロールする道具になってしまうのです。中国ではこの数年、こうしたことが進展しつつありました。
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