京都に来たら一度は行きたい和菓子の老舗名店 「甘いもの嫌いな人」も喜ぶ美味絶品の数々

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私はインスタント京都人であるから、とても入江氏ほどの知識は持ち合わせていないが、尋ねられればお教えできる御菓子司をいくつか挙げてみよう。

寺町通御池下ルにある「亀屋良永」の「小倉山」という羊羹。値段も手頃で、小豆が目一杯使われている、本物という食感十分な一品。次に、文芸編集者の昔、京都に来るたびに購入していた、地下鉄烏丸御池駅の裏にある「亀末廣」の「京のよすが四畳半」という半生のお茶菓子。

我が家の子供たちが小さいころは、この高価で繊細なお菓子をむしゃ食いしていたが、本来お茶席で一粒二粒というように口にするのが作法だろう。値段はちょっと前まで4000円ほどだった。その小さなヴァージョンを購(もと)める手もある。

老舗ならではの豊かな「おもてなし」

商品のことばかりではなく、亀末廣の建物のことも述べておくべきだろう。まさに「京都」の歴史ある商家を絵に描いたような、これぞ老舗という構え。引き戸の重さたるや! 駄菓子的なムードを味わえるのは、木屋町通三条上ルの「月餅家」である。「げっぺいや」ではなく「つきもちや」と読む。この店はわらび餅で有名で、予約をしておかないと手に入らない。

ここでいつも買うのは、なんの主張もしない駄菓子のようなゼリーである。色は薄い紅色。日持ちがするので、旅の人にちょっと持たせるのに都合がいい。

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親父さんがときに接客してくれることがあり、その際に雑談ができる。お菓子屋の親父さんに、話し好きの人が多いのは嬉しい。

この店のお菓子の箱に投げ込まれている注意書きが面白い。「お菓子の事で御座居ますので、消費期限内にお召し上がりください」という言い回し。「○○円からでよろしいでしょうか」とか、最近サービス業の言葉遣いが批判されるなかで、月餅家の言葉遣いも、ちょっとへんな感じがするが、歴史の古さを感じさせて、思わずほんわりと温かい気持ちにさせてくれる。

気をつけるべきは、「ぎぼし」「亀屋良永」「亀末廣」は、日曜日が休みなこと。まあ、日曜日が休みの店はそれだけ伝統店である証明のようなものだが。

さらに他県の人間にお勧めするような和菓子といえば、京都駅でも見つけられる「満月」の「阿闍梨餅」だろうか。小さい箱でもずしりと重いのが、このお菓子の価値を物語っている。

それ以外だと、私がときどきお土産にしていたのは、「豆政」の豆菓子である。本店が近くだったのでよく訪れたが、京都駅でも売っている。二条駿河屋の「松露」についても述べたいが、もうしつこいか。今時のお菓子は洋、和を問わず、どれも美味しい。駅で求めても一向に構わないと思う。

校條 剛 文芸評論家

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めんじょう つよし / Tsuyoshi Menjo

1950年、東京都荻窪生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。1973年、新潮社に入社。「小説新潮」編集長、「新潮
新書」編集委員などを経て、2010年に退職。2014年から2019年まで京都造形芸術大学文芸表現学科教授。2019年より京都文学賞選考委員。日本文藝家協会会員。2007年、『ぬけられますか―私漫画家滝田ゆう』(河出書房新社)で大衆文学研究賞を受賞。他の著作に、『ザ・流行作家』(講談
社)、『作家という病』(講談社現代新書)などがある。

 

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