日本人が「悪い伝統」も残したがる残念な理由 ルールを変えたい人ほど日本では生きづらい

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伝統とは守るべきものなのか、壊していくものなのか(写真:Cybister/PIXTA)
なぜ日本人は「伝統」や「前例」を守りたがるのか? その理由を作家の藤井青銅さんは「伝統マウンティングにある」と考えます。近著『「日本の伝統」という幻想』で、「国技大相撲」「着物警察」「京都マジック」「先祖代々之墓」など「伝統の衣をまとったビジネス」の分析から導き出した「伝統マウンティング」の構図。戦前から日本に蔓延する「伝統マウンティング」の正体とはいったい何かを解説・総括します。

マウンティング……優位個体が劣位個体に対して行なう馬乗り行動。多くの哺乳類は交尾の際、雄が雌に対しこの姿勢をとり、ニホンザルでは雄同士の間でも順位確認のため行なう(日本国語大辞典)

もともとは動物学や格闘技でよく使われていた言葉だろうが、最近は日常でも使う。「マウンティング女子」という言い方は、少し流行した。女性が女性に対して、ルックスや家柄・家族、恋人・配偶者、学歴・職歴、経済力などを上からの立場で自慢しつつ、「あたしのほうがあなたより上よ(=あなたは私より下位の存在よ)」と序列をハッキリさせることだ。

「伝統マウンティング」は逆ピラミッド

「マウンティング」という言葉から、山型のピラミッド構造を連想する人は多いだろう。ピラミッド組織の上位者が、下位者に対して序列を確認・強要する行為だと思われがちだ。

だが、今年1月14日に紹介した「着物警察」など、古くから続く伝統を遵守させようとする「伝統マウンティング」においては、この限りではない。その構図を表すと、次のようになる。

逆ピラミッドだ。この「先人」のところに「先輩」を入れてもいいし、「上司」を入れてもいい。この場合あなた(読者)は、受け手と考えてほしい。専門家や先輩、師匠、上司などの「伝承者」から、「これが伝統です」「日本人ならこうすべきなんです」と伝えられたとき、「ちょっと不合理な気もするけど、そういうものなのか?」「いまどき、それに意味ある?」と思っても反論しづらいのは、相手の背後にこの大きな逆ピラミッドがあるからだ。

一見、1対1で対応しているように見えて、実は相手はこんなに大きな後ろ盾を持っていたのだ。伝統の歴史が古ければ古いほど疑問を挟みにくくなるのは、「先人」の階層がどんどん増えて広がり、逆ピラミッドがもっと大きくなるからだ。この「先人」を「ご先祖」に入れ替えたケースが、お墓・葬儀だ。なにせ相手はすべてこの世にいない。「この人(伝承者)はそう言っていますが、本当にそうですか?」と確認することができないのだ。ずるい。

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