日本人が「悪い伝統」も残したがる残念な理由 ルールを変えたい人ほど日本では生きづらい

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これは伝統文化、伝統芸能の分野だとわかりやすい。もっとも熱心なファンほど、自分たちが応援するモノやヒトの変化を嫌がる。変わってほしくない、ずっといまのままがいい。

われわれは、いま目の前にある伝統に価値を感じているのだから……と。ライトユーザーを「ファン」、ヘビーユーザーを「信奉者」と分けると、こうなる。

伝統を変えようとする人は、それを受け継ぐべき次世代に抵抗されるという、まさかの事態に遭遇するのだ。当然のことながら、信奉者は「よかれと思って」やっているので悪気はない。着物警察も、これにあたる。

伝統を信奉するあまり、変わることで生き延びようとする伝統にブレーキをかけ、かえって衰弱の手伝いをしてしまうことがある。いわゆる「ひいきの引き倒し」という状態だ。これは、多くの伝統ジャンルでおきる。

伝統が変わるとき

かくして伝統は、上と下からの「変えてはいけない」圧力に挟まれて、身動きがとれなくなってしまうのだ。上下からのピラミッドによる伝統サンドイッチだ。

だがそれでも、伝統は時代に合わせ少しずつ変わっていく。100年も経てばけっこう大きく変わっていることもある。なぜ変われたのだろうか?

その理由は社会が大きく変化するとき、マウンティングで圧力をかけてくる上位の人たちが入れ替わるからだ。近代では、「明治維新」と「敗戦」がその最も大きな区切りであることは、誰でもわかる。大きくは国の権力者の交代だが、これに合わせて大小さまざまなジャンルでも、それまで主流だった人々がほかの人々と入れ替わる。このとき、上からの圧力がなくなり、伝統は変更される。あるいは、新たに創られる。

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