厳しい外出制限のドイツで際立つ「森」の存在 健康維持という課題にどう向き合えばいいか

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この背景には、環境保護などのほかに、「生活の質を高める公共空間が必要」という了解がある。

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「生活の質」は、医療分野などでは個人の肉体的、精神的、社会的、経済的といったすべてを含めたものを指すが、より多くの人がリラックスしたり、家族や友人と余暇や運動を楽しめる環境こそが都市にはあるべきという考えが強い。

ドイツの都市には街路樹が多いのも、そういう発想が反映されている。

それでも違反者が出てくる

欧州の人々が芝生に寝そべる光景などを思い浮かべるとわかりやすいが、ドイツには自然を「愛でる」というよりも、余暇・運動など、より直接的な利用をする文化が強い。特に鉛色の冬が過ぎ、太陽が出てくると、よりいっそう人々は外へ出たくなる。

その結果4月最初の週末、ニュルンベルク市で約7050人の「違反者」が出た。警察が人々の外出状況チェックしているのである。暖かくなり、ストレスもたまってきたせいか、1週間前よりも増加した。

「コロナ以前」の森。普段からもよく使われている(筆者撮影)

もちろん、ジョギング・散歩、食料の買い出しなどは許可されているが、最も一般的な「違反」は、日光浴など自然の中での長時間の滞在だった。深刻なものだと自然の中でグループでのスポーツ、バーベキューといったものだ。違反者の内1030人が罰金を課せられた。

現時点では、一時的に権力が介入してでもウイルスを抑制せねばならない。しかし、ドイツにはアクセスしやすい自然空間がたくさんある。ドイツの人々にとって、なかなか悩ましい状況だ。また警察にとっても、こういう監視は初めてのはずだ。現場での判断が難しいところもあるだろう。

そこで、単独の日光浴などは問題ないのではないかという声が市民側から上がる。その結果、州の内務大臣が「日光浴はOK」と明言するにいたる。こういうときの権力はどう介入すべきか、妥当なところを探る社会的なプロセスが見られた形だ。

『ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ところで、4月に入った時点で見た日本の様子は、ざっくりした印象をいえば2~3週間前のドイツのようだ。すでに問題になっているが、外出が制限されると、次に出てくるのが健康維持やストレス対応だ。

このとき、人々が余暇や運動に使える空間はどのくらいあるのか。アクセスのしやすさはどうか、「使える自然」に整備されているかが問われるだろう。

日本の地方へ行けば、木や植物を植え、かなり手の混んだ公園が作られるケースがあるが、自動車を飛ばしていかねばならないところも多い。自治体全体を見たときに最適配置がなされていない形だ。コロナ禍で日常の「生活の質」を高める環境をチェックできる機会かもしれない。

高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト

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たかまつ へいぞう / Heizou Takamatsu

ドイツの地方都市エアランゲン市(バイエルン州)在住のジャーナリスト。同市および周辺地域で定点観測的な取材を行い、日独の生活習慣や社会システムの比較をベースに地域社会のビジョンをさぐるような視点で執筆している。著書に『ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか―質を高めるメカニズム』(2016年)『ドイツの地方都市はなぜ元気なのか―小さな街の輝くクオリティ』(2008年ともに学芸出版社)、『エコライフ―ドイツと日本どう違う』(2003年化学同人)がある。また大阪に拠点を置くNPO「recip(レシップ/地域文化に関する情報とプロジェクト)」の運営にも関わっているほか、日本の大学や自治体などで講演活動も行っている。

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