厳しい外出制限のドイツで際立つ「森」の存在 健康維持という課題にどう向き合えばいいか

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それに対して、筆者が住むエアランゲン市(バイエルン州、人口約11万人)を見ると、かなり公園がある。ベルリンなどの大都市でも住宅地から歩いて行ける公園が多いとも聞く。参考までに国土交通省2016年発表の資料によると、東京23区の一人当たりの公園面積が4.5平方メートル、それに対してベルリンは27.9平方メートルと6倍以上ある。学校・幼稚園が閉鎖したときに、力を発揮したのが、公園の多さだったといえるかもしれない。

公園の数がかなり多いが、閉鎖されている(筆者撮影)

しかし、ほどなくして公園も閉鎖となる。というのも、早い段階で、できるだけ外出を控えることが勧められていたが、若者を中心に、公園や緑地地帯で集まる「コロナパーティ」が行われていた。

「より強力な介入がなければ、感染がさらに劇的に広がる」(マーカス・ゼーダー バイエルン州首相)という状態だったからだ。外出制限は3月22日から2週間の予定だったが、イースター休暇が終わる4月19日まで延長。さらに20日から緩和されたものの、5月3日まで外出制限措置は続く。

森と緑地帯と遊歩道

それにしても、「なるほど」と思えたのが森の存在だ。「赤ずきんちゃん」「ヘンゼルとグレーテル」などドイツのメルヘンには森がよく登場する。しかも「山」ではなく平地である。ドイツの人々にとっては「畏怖」の対象であると同時に、木材や動物などの「森林資源」を活用してきた。国土に対する割合は30%余り。日本の半分程度の割合だが、「山」ではなく平地が多く、都市と連続しているケースも少なくない。

近代に入って、核家族が登場した時期には、森を家族で散歩する姿も多く見られた。都市化が進むほど、「ただ歩く」ということ自体が目的の散歩文化が定着する。これは現代でも強く、散歩を「ドイツ文化」として紹介されることも多い。そして土日となると家族連れ、場合によっては3世代そろって歩く姿が見られる。

エアランゲン市を見てみると、町の周囲が森林に囲まれた構造で、どこからでもアクセスしやすい。公園が閉鎖されたとなると、家族連れ、単身でのジョギング・散歩のために人々は森に向かう。

「コロナ以前」の森。普段からもよく使われている(筆者撮影)

筆者も普段から近所の森を走る。日曜日の午前中、氷点下でも、ジョギングや散歩する人を見かけるのだが、お天気のよい日となると、多くの人が出てくる。

外出制限がかかってからは、ノルディックウォーキング、犬の散歩、サイクリングといった人のほかに、ベビーカーや子ども連れの家族、それに高齢者の夫婦の姿が増えたように思える。

ただ「コロナ以前」と違うのは、すれ違うときに距離を気にする人が多い。それにしても、広大な森のなかで、少々人が出てきても、問題はなさそうだ。

着目すべきは、都市計画のセンスだろう。都市全体を俯瞰して、余暇空間、遊歩道などが適切に配置されるように作る発想が強い。NPOが都市計画など予算化する前から行政の会議に出席することもある。

その結果、森にアクセスする途中に遊歩道や緑地帯、公園などが充実しているというところも多い。

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