新型コロナ「便乗商法」はどこまで防げるのか 消費者庁は対策を強化するが監視に限界も

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今回、行政指導の対象となったのは、景品表示法や健康増進法などの法律に違反する恐れが高いもの。ただ、行政処分のように、事業者名を公表するなどして改善を求めるものではなく、強制力はない。行政指導を行った理由について、消費者庁表示対策課の田中誠氏は「行政処分を下すには、調査に数ヵ月かかる。その間放置されたままになると、特定の商品による予防効果を信じた消費者が感染するリスクもある。命に関わる事案のため、スピードを優先させた改善要請を行った」と説明する。

消費者庁は今回、ネット上の販売行為について監視を行った。現状、地域のスーパーや薬局などの実店舗においては、景品表示法の観点では各都道府県が所管しており、健康増進法については保健所に権限がある。

では、自治体による小売店への対応はどうなっているのか。東京都生活文化局消費生活部の担当者は、「(実態把握のために)1店舗ずつ見て回るのは難しい」としたうえで、「HP上で悪質事業者を通報するサイトを設けているが、今のところ新型コロナに関する商品の報告はない」と語る。

健康増進法を基に調査を行う各地の保健所については、どこにおいても「今は新型コロナの検査で手一杯」(東京都内の保健所)だろう。つまり、現段階では自治体を中心にした実店舗の細かな監視には限界があるわけだ。

新型コロナを連想させる売り方

だが、実店舗でも新型コロナ予防に効果的と思わせる文言はあふれている。消費者庁は、「新型コロナと明言していない間接的な文言にも注意が必要だ」とする。「この時期のウイルスに」「緊急事態に」などの言葉により、消費者が新型コロナを連想する可能性があるからだ。

ある大手小売店は「特定の商品が新型コロナ予防として(ネットなどで)紹介されて売れていたとしても、その効果の有無は判断できない。売れていれば、商品を切らさないよう補充に努める」と、機を逃さず売りたい姿勢を見せる。また、ある飲料メーカーの関係者は、SNS上で自社商品が新型コロナ予防になるという情報が拡散され、乳酸菌飲料が売れている現状について、「会社として『新型コロナに効く』とは言えないため、消費者が発信してくれるのはありがたい」と、あっけらかんと話す。

SNSなどでは、乳酸菌を含む食品の摂取で「免疫力を高める」ことが、新型コロナ予防につながるという情報が広がっている。こうした影響もあってか、市場調査会社のインテージが全国4000店舗の小売店を対象にした調査によると、3月30日からの1週間でヨーグルトの売り上げは前年同期比13%増、乳酸菌飲料は同11%増となった。

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