「新型コロナウイルスの影響により、航空業界、あるいは世界経済全体が、未曽有の危機に直面している。航空業界は、これまでも数々のイベントリスクを経験して来たが、今回はこれまでとまったく規模が異なる、極めて深刻な事態に陥っている」
日本航空(JAL)は4月1日、ウェブ配信した入社式における赤坂祐二社長の祝辞を公開した。そこには、晴れの舞台とは裏腹に、厳しい現況が記されていた。
東日本大震災以来の減少率
JALが3月27日に発表した2020年2月の輸送実績は、国際線の旅客数が55万3964人(前年同月比22.2%減)。航空会社の輸送規模を示す「旅客キロ」(=旅客数×輸送距離)も30億6325万人キロ(同10.7%減)に終わり、東日本大震災の影響が残っていた2011年9月以来となる2ケタの減少率を記録した。
特に新型コロナ感染拡大の震源地となった中国路線は、旅客数が3万1522人(前年同月比73.4%減)、旅客キロが5902万人キロ(同73.2%減)。利用率も30.2%で、10席中7席程度が空席のまま運航していたことになる。
3月の国際線も感染の世界的な拡大により、中国や韓国など東アジアに限らず、あらゆる方面の路線で需要が減少し、予約数は前年同月比で約7割減少。さらに、日本政府が2月末に要請したイベント自粛やリモートワークの推進などで、国内の移動需要も低迷している。
JALは2020年3月期の売上高を1兆4860億円(前期比0.1%減)と予想していたが、下振れが想定される。足元では国際線予約数が前年比で約9割強も減った。これを受け、3月29日から4月30日まで国際線の減便数は4510便、3月29日から5月6日まで国内線の減便数は1万5796便に拡大している。
あるJALの地上職員は「空港は3月からガラガラだったが、4月に入って一層、お客さんが消えてしまった」と話す。
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