破綻から10年、JALはコロナ禍で耐えきれるか

国際線の予約数が9割減、ANAは大幅下方修正

一方、金融機関からのコミットメントラインや社債を含めた手元現預金は4000億円近くあるとみられ、ざっと1年程度は収入がなくても耐えられる計算になる。なお、1年以内に返済や償還が必要な有利子負債は、131億円にとどまる。

会社側によれば2020年度に見込んでいた約2000億円の設備投資も先送りが可能だという。仮に運航が全便でストップしても、JALの資金繰りは13カ月ほど持ちこたえることになる。

ANAの耐久期間は7カ月程度か

競合のANAホールディングスに目を移すと、同様の分析で月当たりのキャッシュアウトを伴う固定費は約600億円。キャッシュは手元資金の3900億円にコミットメントラインの1536億円を加えた、計5436億円を用意できる。

ANAはコロナ禍をどう乗り切るのか(撮影:尾形文繁)

ただ、ANAは、直近の有利子負債が8481億円にのぼる。そのうち、1年以内に返済や償還が必要な有利子負債1079億円をキャッシュから差し引くと、資金繰りの耐久期間は7カ月程度となる。

ANAが4月20日に発表した2020年3月期決算の修正予想は、売上高が1兆9700億円(前期比4.2%減)、営業利益が600億円(同63.6%減)。新型コロナウイルスの影響による1~3月期の営業赤字596億円が響き、大幅な減益見通しとなった。

ANAの片野坂真哉社長は4月発売の経済誌のインタビューに対し、日本政策投資銀行と1兆円、民間銀行と3000億円の融資枠設定を調整していると語っていたが、同社広報は「資金調達の詳細については公表を差し控えさせていただきます」としている。

こうした背景から、ANAは役員報酬をカット。さらに、4月から客室乗務員など、グループ社員約4万4000人のうち半数近い約2万人の社員に、JALが検討にすら入っていない一時帰休を1年間をメドに実施。事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業手当に要した費用を助成する「雇用調整助成金」を活用するためだ。一時帰休中は基本給などを補てんする。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

とはいえ、オーストラリアの航空コンサルティング会社・CAPAは各国政府による航空会社への経営支援がなければ、「2020年5月末までに、世界のほとんどの航空会社が経営破綻する」と警鐘を鳴らしている。JALやANAのような大手に限らず、2018年12月末時点で流動比率が35.8%となっているLCC(格安航空会社)の春秋航空日本など、ほとんどの航空会社で金融機関との交渉で運転資金を確保するなど手当てをする必要があるとみられる。

危機回避に向け、業界は国内航空各社が加盟する定期航空協会を通し、政府に各種支援を要望。4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策」では、航空会社に対する着陸料や各種税金の支払い猶予、危機対応融資、雇用調整助成金の助成率引上げなどが盛り込まれた。業界各社は生き残りをかけ、資金確保に奔走している。

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