ニューヨーク市民「行動制限された」生活の現実 現地在住者が見た都市封鎖における人々の行動

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いつになく人が少ないタイムズスクエアの電子広告では、各企業が、「SOCIAL DISTANCING」「COVER YOUR FACE」などの注意喚起とともに、「We are United」「We're All in This Together」などのメッセージを流し続けていた。

この異常事態のもと、ニューヨーカーは、素直に州の方針に従っているようにみえる。クオモ知事は、「事実を伝える」という信念のもと、毎日ブリーフィングを行い、現状を明示するとともに、州としての対策、ニューヨーカーへの協力要請のメッセージを発信。ニューヨーカーの間では、クオモ知事を支持する声が多く、ツイッターでは、「毎日、知事のメッセージに元気づけられる」というコメントも見られる。ニューヨーカーの団結に、クオモ知事のリーダーシップが一役かっているのは確かだろう。

そのクオモ知事は、4月18日、結婚許可証をリモートで取得することを許可する州知事命令に署名したと発表した。結婚許可証を取得するには、通常2人で市役所に出向き、面接で意思確認をしてもらうことが義務付けられているが、「NEW YORK STATE ON PAUSE」の期間は、この面接がビデオ会議で実施される。コロナをきっかけに、一緒に人生を歩んでいくことを決意し、結婚に踏み切るニューヨーカーも増えるのだろうか。

エッセンシャルワーカーへの謝意

◼Thank Essential Workers

最前線で働くエッセンシャルワーカーたちは、常に感染の危機にさらされ、実際に感染してしまう人もいる。街中では、「Thank Essential Workers(エッセンシャルワーカーに感謝)」というメッセージを目にする。毎日夕方7時になると、いつもはひっそりとしたニューヨークに、大きな歓声と拍手、鍋を打ち鳴らす音が響き渡る。エッセンシャルワーカーへの感謝の気持ちの表明だ。

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病院前では、関係者たちが整列して声援に応えていた。「STAY HOME」しているニューヨーカーたちが、一斉にベランダに出たり、窓から顔を出したりする姿が見られ、唯一、街とのつながりと、人の温もりを感じられる瞬間でもある。全身の力を振り絞るように、”Thank you !!”と叫ぶ声を聞くと、ニューヨークの街は眠っているかのようで、ニューヨーカーの魂は、こんなことでは眠らないのだと感じる。

鯰 美紀 インタビュアー&ライター

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なまず みき / Miki Namazu

兵庫県芦屋市出身、関西学院大学卒。関西経済連合会・国際部に5年間勤務し、結婚を機に退職。ワシントンD.C、北京、東京を経て2018年夏からニューヨーク在住。ライターとして、会社役員からメダリストまで、約3年間で250人以上を取材。企業パンフや専門誌などに幅広く執筆するほか、プロフィール作成等で個人事業主を応援している。公開インタビュアーとしても活動中。http://namazumiki.com

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