ニューヨーク市民「行動制限された」生活の現実 現地在住者が見た都市封鎖における人々の行動

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◼ COVERE YOUR FACE

アメリカにはもともと、アジアのように風邪予防にマスクを着用する習慣はない。筆者は、昨年の冬にマスクを着用して家を出たところ、顔見知りの警備員に「どうしたんだ?」と質問された。それほど、かつてのニューヨークでは、マスク姿は異様に映ったようだ。

コロナウイルスの感染が始まっても、ニューヨーカーの間では、「マスクは感染者がするもの」という認識が一般的だったと思う。ところが、WHOが4月になってから、感染拡大防止のために、感染の有無にかかわらず、マスクの着用を推奨する見解を示した。その頃から、ニューヨークの街中でも、マスクを着用する人々の姿が増え始めた。

4月17日には、ニューヨーク州で、他者との一定の距離を保てない公共の場におけるマスク等(バンダナなどでも良い)の着用義務が発行された。今では「COVERE YOUR FACE」、「KEEP THEM COVERED」という標語をあちこちで目にするようになり、すれ違う人の多くがマスクを着用している。路上では、サニタイザーやマスクを売る商魂たくましい業者も表れ、通りすがりに値段を確認した女性は、「近所でもっと安く買えるわ」と立ち去って行った。

公園のベンチでiPhoneを使って会話

◼ We are All in This Together

筆者の家の近所でコーヒースタンドに立ち続ける店員は、「毎日多くの人が買いにきてくれる。コーヒーは家でも飲めるけれど、僕たちには、INTERACTION(関わり)が必要だ」と話してくれた。

ニューヨーカーは、これまでも2001年の世界同時多発テロ、2008年のリーマンショック、2012年のハリケーン・サンディなど、多くの危機を団結して乗り越えてきた。今回は、「SOCIAL DISTANCING」が欠かせない状況で、物理的に集まって結束することも、友人とのハグで人の温もりを感じることさえもできない。

とはいえ、心のつながりは必要だ。週末前には、ニューヨーク市から、「STAY HOME。友だちや愛する人たちとは、電話やテキストメッセージ、ビデオチャットでつながろう」というメッセージが届く。公園のベンチでも、iPhoneをのぞきながら、知人と話をしている人の姿が見られる。

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