脳科学者が教える良質な睡眠のための9の習慣 アルツハイマー病を避けるブレイン・ルール
ところが、年齢を重ねると「徐波睡眠」の量は減ってしまうという。20代では「徐波睡眠」が睡眠時間全体の20%を占めるが、70歳になると約9%にまで減少。なかなか深い眠りにたどり着けない「睡眠の断片化」が起きてしまうのだ。
これに加えて、記憶に関連するほかの脳の機能も衰え、60歳以上になると、眠っている間に記憶を堅牢にすることもなくなるという。物忘れが増えるのはこのためだろうか。また、睡眠の断片化は、うつ病や不安障害とも深い関係があるともされている。
だが、60歳になったらもう終わりという話ではないのが『ブレイン・ルール』だ。青年期と中年期にいい睡眠習慣を保てば、認知機能は向上し、加齢による認知機能の低下を抑えることもできるという。
脳を知り、今から対策を始めておけば、現在の思考力や記憶力を高めるだけでなく、老後の資産でもある「健康な脳」を得られるというのがメディナ博士の提唱なのだ。
では良質な眠りを得るにはどうすればよいのか? メディナ博士は本書で、睡眠学者の故ピーター・ハウリ教授のアイデアをベースに、最新の研究も交えて9つの方法にまとめて紹介している。
このハウリ博士が書いた『No More Sleepless Nights』という本は、長きにわたって不眠症治療のバイブルとされてきたそうだ。一方、ハウリ博士は、ほかの科学者に先んじて、睡眠の習慣は人それぞれに違うとも述べたらしい。だから取り入れる際には自分の状況をよく考えてからにしようとメディナ博士も述べている。
良質な眠りを得る9つの方法
そんな注意を踏まえつつ、メディナ博士が紹介する9つの方法は次のとおりだ。
2. 睡眠のための場所を作ろう。多くの人にとっては寝室がそうなる。そこで食べたり仕事をしたりテレビをみてはいけない
3. 室温に配慮しよう。眠るのに最適な温度はおよそ18℃。寝室は涼しく保とう
4. 規則正しい睡眠習慣を作ろう。毎晩同じ時間に寝て、朝は同じ時間に起きるようにしよう
5. 体から発信されるサインに気を配ろう。可能なら、疲労を感じてから眠るようにしよう。30分たっても眠れない場合はベットから出て、紙の本を読もう。退屈な本がおすすめだ
6. 光に配慮しよう。昼間は明るい光を浴び、夜は照明を落とそう
7. ブルーライトを遠ざけよう。波長が380〜500ナノメートルのブルーライトを発するものを遠ざけよう。青は空の色だ。進化の途上で脳が青い光を見たのは、昼間だけだった
8. 日中は多くの友達と過ごそう。うつ病は睡眠の断片化をもたらすが、社会的交流にはうつ病を防ぐ強い効果がある
9. 睡眠日記をつけよう。シンプルな形としては、起床時間、就寝時間、夜中に何回起きたかを記録する
ここで詳述することはしないが、メディナ博士は、ピッツバーグ大学の研究者らが開発した、「不眠症のための簡単な行動療法」についても言及している。
この研究に参加した被験者は、実験終了時に、不眠の症状が消えていたという。しかも、その効果は6カ月後にも観察されたそうだ。この実験は、真剣に生活習慣を変えれば、人生を長期的に改善することができることを体現するすばらしい事例だと、メディナ教授は言う。
上で紹介した9つの方法も、心がけ次第で取り入れられるものが多いように思える。思い立ったが吉日、ぜひ実践して、自分の睡眠にあったやり方を探してみてほしい。
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