逆に心配なのは、輸出が伸び悩んでいることである。円安にもかかわらず、数量ベースでの増加が遅れている。なぜか。以下の4つの理由が考えられる。
輸出が伸び悩む4つの要因
第1に、製造拠点の海外移転である。特に大震災以降、円高や電力不安を嫌って海外に製造拠点を移す動きが加速した。このトレンドは、1年程度の円安では変わらない。特に部品点数が多い自動車産業などでは、「今立ち上がる設備投資は、超円高時代に計画したもの」と言われる。国内における設備投資は、ここへ来てようやく少し増え始めたところで、「俺はまだ本気出してないだけ」なのかもしれない。
第2に、国内の需要が強過ぎて輸出余力が限られているという現実がある。人口減に起因する国内市場の縮小を見込み、鉄鋼産業などは以前から供給能力を減らしていた。ところが昨年から急に国内需要が増えたために、「輸出に回す分がない」という変な事態が起きている。この点については、むしろ消費増税によって内需が減速する4月以降が、輸出拡大のチャンスということになる。
第3に、日本企業の海外拠点で生産能力が高まり、現地調達率を高める動きがこれに加わる。もはや日本から資本財を送ったり、部品を送ったりする必要がなくなったということだ。その分、日本からの輸出は減少せざるを得ないが、当該日本企業にとってはいいニュースであろう。それだけ競争力が向上していることを意味するからだ。
第4に、日本の輸出先として期待される新興国経済の変調という問題がある。これについては、前回の当欄(やっぱり新興国経済は「軽くヤバい」ぜ)にて触れた通り。実際に2013年は、日本の対米輸出(12.9兆円)が対中輸出(12.6兆円)を5年ぶりに上回っている。つまり米国経済が良くて、中国経済が今一つだったということ。こればっかりは相手のあることゆえ、慎重に見ていくほかはない。
ただしウクライナ情勢などの地政学的リスクは、日本の主要貿易相手国に直接的な影響をもたらすとは考えにくい。また「フラジャイル・ファイブ」の中で、もっとも日本との関係が深いインドネシアが、もっとも立ち直りが早いのは心強いことである。
結論として、輸出はこの4月からの2014年度が勝負ということになる。アベノミクス2年目の浮沈のカギを握るのは、ズバリ貿易だ。「日本の製造業は空洞化してしまってもうダメだ!」という意見に筆者は与さない。いいチームのベテラン4番打者は、周囲から「もう限界だ」と囁かれ始めてからが意外としぶといものである。日本のモノづくりもそれと同様であると、筆者は信じている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら