「キャンプで生活する多くの人は、コロナウイルスにより世界で多数が死んでいることは知っていても、一体どんなウイルスなのか、感染の予防法や感染した時の症状などは知らない。アラーの神の加護を祈るのみである」と訴えている、とアルジャジーラやAFPは伝えている。
前述のAli氏も、「自分の身を守るためにニュースや医療関連サイトが必要だし、離れた家族や友達に近状を伝えるにはSNSが必要だ。だが、こうした必要不可欠なライフラインすらない。バングラデシュによる通信制限によって、国が設けているホットラインにさえ電話をかけることができない」と訴えている。こうした中、国際人権組織のヒューマン・ライツ・ウォッチは、バングラデシュ政府に対して、ネット制限の解除をするよう声明を出している。
ミャンマーでも医療アクセスはほぼない
一方、ラカイン州にとどまっているロヒンギャ族の人々も危険にさらされている。
ミャンマーでは3月23日に初めての感染者2人が確認されて以来、緩やかにではあるが感染者数は拡大し続けており、4月16日現在の感染者は74人、死者は4人となっている。
ミャンマーの医療水準や、コロナ感染検査の機器の性能や基準が明らかでないことなどからこの数字は実態に即していないとの見方も出ているが、政府は毎日情報を更新している。
ミャンマーの実質的な指導者であるアウンサン・スー・チー国家最高顧問兼外相は、インターネットの動画サイトに自ら登場してせっけんで念入りに手を洗い国民に手洗いの励行を呼びかけるなど感染拡大の阻止に躍起となっている。
こうした中、ミャンマーの日本大使館は3月24日にラカイン州北部のマウンドーにある市民病院に対する約48万ドル(約5200万円)の無料資金提供することで合意。日本大使館などでは同病院の入院設備や外科、救急医療の設備拡充に資金はあてられる予定という。
しかし、少数派イスラム教徒であり、バングラデシュ国境に近い地方が居住地域という地理的条件、そして現在もイスラム系武装組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」との戦闘が続くという治安情勢などから医療、保健当局の支援がほとんど届かない状況が続いている。
こうした状況下、ミャンマー中南部パテインにある地元裁判所は4月8日に突然、市内に収監中のロヒンギャ族128人の釈放と帰省許可を発表した。これにより収監されていた人々は自由の身となったが、行動の自由はなくラカイン州のそれぞれの故郷に帰省し、現地で生活することが求められているという。
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