接触機会8割削減策がズレていると考えるワケ なぜ通勤客の削減を重視しすぎてしまうのか

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最大の問題は、すべての人間を同一と考えているところだ。経済学も同じ問題があり、平均的個人というやつだ。ファイナンス理論では平均的個人が市場全体をそのまま表し、それがあたかも一人の経済主体であるかのように扱う。これは便利なのだが(そう扱えるように美しい理論を構築したのであるが)、誤った現実へのメッセージを結論として出してしまう。金融市場で言えば「株価は常に正しい」という効率的市場仮説であるが、ここでは、感染リスクの話である。

人々を「3つの類型」で分けてみる

さて、人々は「新型コロナ感染対策市場」ではどのように行動するか。行動パターンから、人々を3つの類型で分けてみよう。

まず、グループAは「すべて自分で決め、人の言うことは聞かない人たち」である。外出を徹底的に自粛するかどうか、自分で決める。大雑把に言うと、そのうちの半分は「自分が望んで自粛を徹底的に行う人々」で、もう半分は「誰がなんと言おうと自粛はしない人々」と仮定しよう。言い換えれば「リスク回避を徹底する人」と「リスクをまったく気にしない人」といってもよい。

次のグループBは「受け身ではあるが、自分で判断する人々」である。彼らは、政府が自粛要請をしたり、世の中の感染の報道を見たりして、情報を収集した上で、自粛するかしないかを決める。

行動ファイナンスではこういう人々を「ニュースウォッチャー」と呼ぶときもあり、ファンダメンタリストに近いともいえるが、要は情報に基づいて判断する人たちである。リスクは嫌であるが、実際に回避するのはそのリスクの程度と回避のコスト次第である。経済学的にはリスクは嫌いだが、リスクとコスト(リターン)を勘案して決める人たちである。

最後に、グループCは「流行に乗る人々」である。みんなが自粛するなら自粛。そうでないなら自粛しない人たちである。行動ファイナンスならモーメンタムトレーダーで、バブルを膨らませる人々である。

問題はこの3つのグループの割合である。その想定によって大きく変わるが、日本人の特性としては、まじめであるということと、強制されなくても空気を読む、などとよく言われる。

そうすると、「受け身ではあるが、自分で判断する人々」というグループBが少なく、「流行に乗る人々」のグループCが多いということになる。欧米ではどう考えてもグループCがほとんど存在せず、多くの人がグループBなのだが、「すべて自分で決め、人の言うことは聞かない人たち」というグループAの割合もそれなりにいると思われる。

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