接触機会8割削減策がズレていると考えるワケ なぜ通勤客の削減を重視しすぎてしまうのか

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こういう人々には、危険だといくら説得しても無駄である。リスクに無関心であるからだ。ギャンブラーにいくらギャンブルをやめさせようとしても、やめないのと同じである。「どうせあたらない、損してばっかりじゃないか」、と言っても「次は当たる」と夢見ているから、止められない。カネがなくなったら借金してでもやる。まともなところは貸さない違法な高金利しかないが、それでもやってしまう。言ってしまえば、「割に合わないもくそもない」のである。

彼らのようなギャンブラーを止めるにはどうするか。答えは「軍資金を完全に断つ」ことである。金利の高低は関係ない。いくら金利を払おうが、貸さない、金を一切渡さないことである。もうひとつは、ギャンブルを廃止することである。例えば、競馬が開催されなければ、やりたくてもやれない。

バブルも一緒だ。中央銀行が引き締めても、バブルのピークではリスクテイクして儲けることがブームだから、金利水準は関係ない。より高いリスクをとるだけだし、ハイリスクハイリターンをその分追いかけるだけで、バブルはますます過激化する。これがバブルの最後のステージである。

どうするか。やはりカネを一切回さないことである。日本の1990年までの不動産バブルを止めたのは、結局は総量規制である。それ以外は何も効かなかった、総量規制でカネが借りられなくなったら一気に崩壊した。

新型コロナ対策でも「グループAつぶし」が有効

新型コロナで言えば、自粛ではだめで、サプライサイドの休業規制、休業命令をしないといけないのである。だから、東京都が、休業要請に明示的に「性風俗店」「デリヘル」と具体名を挙げたのは妥当なのである。

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しかし、問題がある。例えば首都圏のギャンブラーは中央競馬がなくなったらどうするか。大井競馬場などに行くのである。競馬がなくなったらどうするか。競艇に、オートレースに行く人もいるのである。カジノに行くのである。違法賭博にも行くのである。また、東京で休業要請があるとどうなるか。働き手の一部は地方に職を求める。東京で営業を続ける店に行く。地下にもぐる。こういう弊害があるので、手ごわいのである。

しかし、それでも「いい面」もある。

かつて消費者金融市場は、貸金業法改正で大幅に縮小した。借り手はどこにいったのか?闇金に流れたという噂は正しくはなかった。それは一部に過ぎなかったのである。借り手の大多数は、過払い請求訴訟でカネを得て完済し、市場に戻ってこなかったのである。それでもまた借りる人もいるだろう、違法金融に手を出す人もいるだろう。取り締まりきれない。それでも、その割合はかなり低い。

新型コロナもそうである。グループCを動かす。減らす。そして、コアのグループAの大半をつぶす。つぶしきれないものが残る。それでも割合は大きく減っている。後は、重篤化するリスクを減らすことを自己防衛で徹底的にするしかない。

このことは、7割減少を遮二無二8割減少へともっていくことよりも優先順位が高い。対策としてはより重要なうえに、対策効果も大きいものがあるのだ。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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