MacBookが世界中同じ角度で展示される深い訳

背景には行動経済学の視点がある

消費行動を促すための最も大切なこととは?(写真:robertcicchetti/iStock)  
従来ビジネスは、理性やロジックに重きが置かれてきた。しかし実際、ビジネスは人によって成り立っている。人は理性では動かないし、無意識レベルでさまざまな情報に影響されている。
「Apple Storeには人の無意識に働きかける工夫がたくさんある」。『感性思考 デザインスクールで学ぶ MBAより論理思考より大切なスキル』を上梓したビジネスデザイナーの佐々木康裕氏はそう語る。MBA留学をやめ、アメリカ・デザインスクールに留学した経歴をもつ同氏に人の感性に訴えかけるとはどういうことかを聞いた。

Apple Storeが世界No.1ブランドであるワケ

皆さんも、1度はApple Storeに足を運んだ経験があるのではないでしょうか。

Apple Storeは店舗の単位面積当たりの売り上げが、世界中の全ブランドの中でナンバー1です。ティファニーやプラダ、ロレックスといった高級ブランドを抑えて、2位のティファニーの倍以上の売り上げを誇ります。

そして、このApple Store にはデザインスクール的な工夫が100個も200個も埋め込まれています。

例えば、その1つが76度の魔法

Apple Store では、店に展示しているノート型パソコンの開いている角度は76度と全世界共通で決まっています。その角度を測る専用のアプリがあり、お店のスタッフは開店前にスマートフォンのアプリで角度を測って、76度にそろえています。勤務が長い人は慣れていて、目測でほぼ76度にそろえられる人もいると言います。

なぜ76度なのか。それはユーザーに触らせるためです。

これはApple のデザイナーのジョナサン・アイブが言っている「人は触ったものには恐れを抱かない」という考えに基づいています。

76度という角度は垂直に近く、店舗内を歩く訪問客からは、ディスプレイが見づらい角度になっています。

そこで訪問客は自然と、自分にとって見やすい角度にするためにディスプレイを触って自分で調整することになります。

このようにして、訪問客がプロダクトと物理的に触れることで、訪問客の中で、プロダクトに対する心理的なハードルが一段下がります。その結果、購買につながる可能性が高まるという考えです。

実はApple はこの角度の微調整を重ねており、2015年ぐらいまではその角度は70度だったと言われています。最適な角度を今でも探り続けているのです。

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