コロナ暴落後、いずれ更なる暴落がやって来る 衰退する米国が直面する「避けられない真実」

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もともと2008年のリーマンショック後、漠然とアメリカの歴史的役割の終焉を感じて来たが、今回は自らの経験も交え、新型コロナショックがアメリカを頂点とするリベラル社会に大きな転換点をもたらすことが改めて確信できた。

その理由については、歴史的な背景説明も必要なので次回以降に回すとして、今回は起きている具体的な事柄に話を絞ろう。新型コロナショックが起きるまで「史上最長」と言われたアメリカの好景気が、こんなにも脆弱であったことは本当に衝撃だった。2019年にアメリカ国内で生み出された仕事の20%は旅行などのインバウンド関連だ。今回はそれらに加え、リーマンショック後の雇用回復の中心だったレストランなどのサービス産業が壊滅した。

一方、ボーイング社や航空会社など、今回トランプ政権の救済を受けた主要産業は「非常時のための内部留保の資金」は全くなく、利益が上がればひたすら自己株買いなどを行って株主に還元していた。それどころか、利益がない会社の中には、低金利政策で生み出されたチープマネーで社債を発行し、その資金で自己株買いをしていたことが起き彫りになった。そして、いざ困ったら新型コロナを理由に国に泣きついたのである。

具体的には、それらの会社に投資をしてきたヘッジファンドなどが、トランプ政権や、プライベートエクイティ出身のジェローム・パウエル議長のFED(米連銀)に圧力をかけたと考えていい。皮肉にも今年のダボス会議のテーマは、「ストックホルダー(株主)資本主義からステークホルダー(さまざまな利害関係者)資本主義へ」だったが、新型コロナで明らかになったのは、驚くほどの「アメリカ型資本主義」の情けない姿だった。

今回の「危機の本質」はどこにあるのか

結果、FEDとトランプ政権は、リーマンショックでもしなかった、いくつかの処置を断行した。以下の5つはそのリスト(と簡単な解説)である。

 1)CPFF (Commercial Paper Funding Facility=コマーシャルペーパー資金調達ファシリティー=CP発行企業からのCP購入)
 2)PMCCF (Primary Market Corporate Credit Facility) =企業の新発債の購入や新規貸出を行う

3)TALF (Term Asset-Backed Securities Loan Facility) =資産担保証券の購入
 4)SMCCF (Secondary Market Corporate Credit Facility) =市場からの社債や社債ETF購入
 5)MSBLP (Main Street Business Lending Program)=中小企業向貸し出しプログラム

驚くべきことに、FEDはこのどれについても、実行することについて法的に許されていない。ではどうやっているのか。上記の5つを実行する主体は、すべてSPV(pecial purpose vehicle=特別目的会社)である。

そしてSPVへの資金の出し手はFEDではなく財務省である。つまり、財務省は議会が可決したファンドから資金を出し、FEDは各SPV市場の業務に必要な資金を提供するという形式をとっている。その際の業務の主体はFEDではなく財務省であり、実際のオペレーションは、民間企業であるブラックロック社が、委託を受けて行っている。

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