「支援金が届かない」アメリカの思わぬ大混乱 巨額の経済対策も手続き手間取り実行遅れぎみ
しかし、失業者や企業の救済策が相次ぎ打ち出される一方で、行政の負担は増え、支援の提供に深刻なボトルネックが生じている。
週間の失業保険申請件数は従来の数十万件から数百万件に膨れ上がり、各州政府の事務処理能力では処理が追い付かない状況になっている。
インターネットで短期の仕事を請け負う「ギグエコノミー」の労働者を対象とした給付金はCARES法の目玉政策だが、失業申請を受け付ける州当局のウェブサイトでは依然として、給付金についての説明がない。これとは別の、個人1人当たりに最大1200ドルの小切手を送る救済策についても、実施時期が明確になっていない。
航空会社などの大手企業はCARES法の下で融資の対象となったが、手続きの仕方や時期などについて財務省の指示待ちの状態が続いている。
中小企業への緊急融資が遅れている
さらに、米経済の屋台骨とされる中小企業は、政府が約束した小切手や緊急融資の実行が遅れていることに不満をあらわにしている。
ムニューシン財務長官は、3500億ドル規模の「給与支払い保護プログラム」と呼ばれる中小企業支援融資制度が今月3日に始動した際、中小企業は銀行に行けば融資を受けられると述べていた。しかし、そのわずか数日後に申請書類の書式やオンライン障害など技術的な問題が噴出、一部の銀行は申請処理が進められず、大きな遅延に見舞われた。
銀行側は、財務省や中小企業庁(SBA)からの情報に矛盾や不足があると不満を述べており、企業側は銀行側が対応していないと批判している。米中西部の銀行関係者は「混乱が続いている」と嘆いた。
同支援制度が機能不全を目の当たりにしたFRBは6日、銀行に対して同制度で融資した分の資金を提供する方針を示した。
しかし、融資が行き渡るまでのつなぎの支援金もまだ企業の手元に届いていないようだ。SBAの災害融資制度に前週初めに申し込んだ中小企業は、融資の前金として1万ドルを3日以内に受け取るという項目にチェックを入れることができたが、複数の企業は、1週間以上経ってもまだ前金を受け取っていない、とロイターに明かした。